詩人:浮浪霊 | [投票][編集] |
彼はクラスに一人はいるイタい系の人で、【手かざし様】と呼ばれていた。
人には手を翳すだけで病を癒す力が有るのだと彼は言った。
それが彼の親が宗教にコケたからだったのか、彼自身がそういった超能力的なものにロマンを感じる性質だったからなのかはわからない。
ともすれば祖父母がそういった迷信について彼に語ったことが有ったかもしれないし、あるいは一部の武道の流派が提唱する、気とその功用についての馬鹿げた理論を鵜呑みにしていたのかもしれない。
彼は私のことが好きなのでは無いか。そう思うようになったのは、クラス旅行前に高熱を出して保健室で休んでいた私を、保健委員だった彼が見舞ってからだ。
お見舞いに来てくれた彼に、私は手をかざすことを許した。その時まで彼とは数度話したことがあるきりだったが、彼の趣味のことは知っていた。翌日のクラス旅行参加したさで藁にもすがる思いだったし、怖いもの見たさのような気持ちもあった。気に入らないようなら後で面白おかしく吹聴して、思い切り馬鹿にしてやるつもりだった。
彼がおずおずと伸ばし、そっと私の額に添えた手が冷たく、それが変に気持ちよかったのを覚えている。
「オレの手から額を通して流れ込んだ気が、体の中の悪い気を洗い流していくのを想像して」
彼に言われるまま意識を集中し、このまま治ってしまえと強く念じた。彼もまた目を閉じ念じ始めた。
だんだん楽になっていくような気がして、これはひょっとしたらひょっとするかもな、などと思った。
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翌日には熱は下がっていた。狐に摘まれたような気分だった。
寝汗で癖のついた頭を苦労して梳かし、登校すると、校門前で彼と鉢合わせた。
彼はバツが悪そうに私に微笑みかけた。私も笑い返したが、お互いになんと声をかけたものかわからず、妙な間が流れた。
通りがかった級友が何か話しかけて来ようとしたが、無言で立ち尽くしている私達を見て場の空気に気圧され、訝しげに私達を眺め回すと立ち去っていった。
それからだ。私達のまわりで噂が立つようになったのは。
妙な噂には尾ひれがついて、私達はいつの間にか付き合っていることにされ、変な渾名もつけられた。教祖夫妻、だそうだ。全く。
彼は子供らしく狼狽えたようだったが、私はまんざらでもなかった。
私達はよく話すようになった。互いの誕生日には贈り物を用意し、バレンタインにはチョコレートを交換し、クリスマスは一緒にフライドチキンを食べた。
疲れがたまったり、痛む所が有ったり、頭が痛んだりすると、私はその度にそれとなく彼に話し、癒しをねだった。
逆に彼が具合を悪くすると、私は彼を真似て手を翳してやった。
そう、本当のところただ彼に触れてもらいたかっただけだった。時に私は彼に触れてもらいたさで仮病をつかうことすら有ったのだ。私にとってそれは愛撫のようなものだった。
私にとって彼は特別な人になった。触れようとしてくれる人間など、彼以外にはいなかった。親ですらそうだった。最後に彼以外の誰かに触れてもらえたのがいつだったか、私は思い出せなかった。
冷やかす声はなかなか消えなかったが、私たちは辛抱強く耐えて皆が飽きるのを待った。
やがて年月が経ち皆の童気が抜け、私達の渾名はただの夫妻になり、更に数年が経つころには特に珍しくもないただのカップルとして認知されるようになった。
困難はむしろ私達の手脚が伸び、精神的にも肉体的にも半端な大人もどきになるのを待っていた。
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シャナ様のリクエストにお答えして。
激化への第一歩。
【 デュラン事件01.】
http://strayghost.yumenogotoshi.com/dylan01.html
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お前は親を憎んでいるか?
僕の母は、憎んでいたよ。
僕ら?
僕らは…… 分からない。
【 BlackShineProvince.】
http://strayghost.yumenogotoshi.com/BlackShineProvince-ar.html
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残月滴露湿人袂 暁風吹髪覚秋冷
黎明前の、月の影 朝露が松から滴たり、僕の袂を濡らした
秋の冷たい風に髪がはためき、 僕は身震いするのだ
忽驚大蛇当路横 抜剣欲斬老松影
ふと大蛇が路に横たわっているのを見て 思わず驚き剣を抜いた僕は気づく
そう それは月光に浮かぶ老松の影
▶月田蒙斎 暁夢
http://xn--wqr567j.net/item63.html
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いやあ、はは。また月曜日だよジーザス。勘弁してくれよ・・・
・・・。
でも、でもね。君も苦しいんだとおもうと乗り切れる気がする。
君も同じように耐えてるんだとおもうと、
力がわいてきて、闘う力が湧いてくるんだ。
君の御蔭で。
・・・。
感謝の気持ちでいっぱいだよ。本当だよ。もっと苦しめ!
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オレは、テスト勉強をしてました。
病気が原因でテストに失敗したら親は何と言うだろうかと、ただそればかり恐ろしく、あのおぞましい抗癌剤の点滴を受けながら教科書を読みました。開けているのも辛い血走った目に負担をかけたため、視力はみるみる落ちました。
親はそんなオレを見て褒めてくれました。
こんなひどい有様の、病み痩せ細ったオレを見て、彼らは満足そうでした。
こんなになってまで勉強するオレを見て、見直したと言ったものでした。
死に逝くオレを自慢に思うと言いました。
ああ。
死の間際。オレは看護師さんに言いました。
ああ、オレは、オレは。
……僕は、何のために生まれてきたの。
【 boysneverCRY.】
http://strayghost.yumenogotoshi.com/boysnevercry-ar.html