詩人:浮浪霊 | [投票][編集] |
人体って、意外と好い加減
(馴染みの彼女はマッサージしてくれながら、感心したように語ってくれた)
お腹の中をかきまわしても
血管に何リットルも液体を注入しても
でっかい塊をえぐり取っても
末肢を切り除けても
急所以外を何度刺しても死なないのに
急所を狙えば、直ぐに壊れるんだから
(馴染みの彼女にマッサージして貰いながら、この人は普段一体なにをしている人なのだろうと、僕は思った)
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ああ、可愛い人よ
(墜落する飛行機には無神論者なんていないと)
子供時代、私は夜ごともう眼を醒ます事が無いよう祈った
(言い聞かせるように私に語った彼女に対し)
だから無神論者でも祈る事があること、そして祈りが叶わないことくらい、知っているよ
(私は上手く笑えていただろうか?)
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でっち上げの霊感を真に受けて頼ってきたらしい彼に、私は夜部屋を訪ねることを約束した。
その夜、街は蒸し暑く、雨は生温く、街明かりは心細く彼の家族は出払っていた。彼は哂った。私は自分の声が上擦るのが分かった。
彼は私を襲った。
彼は素早かった。私は犯され、それはとても痛かった。私は泣いた。彼は哂った。彼は私を辱めようとし、私は彼の睾丸を喰いちぎった。血糊が私の目を潰し、彼は絶叫し、転倒し、恐怖し、痙攣し、失血し、死んだ。鼓動が私を翻弄し、思考と呼吸が乱れに乱れた。もう訳が分からなくなって、涙が勝手に流れた。
どうしよう。
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時々、世界のあらゆる色が削げ落ち、自分が何故生きているのかさえ分からなくなる瞬間がある。
(毛布に包まり小さくなって、彼女はぽつぽつと続けた)
恐怖に捕われ詩おうと、逃れようと試みて、私は知るのだ。
詩ツクることこそ無意味だと。何故なら産ツクることとは生きることであり、生とは虚無そのものだから。
(彼女が震えてさえ居ないのが、私には恐ろしかった)
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剥き出しの肉と肉 触れ合わせ
脂と汗と血と体液を混ぜ合いたい
そう強く衝き動かすものが有り
私たちは抗えず 互いを手に掛け、喰らう合うように
踊った。
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何か背負って無いと、落ち着かないんだよね。小学生だった僕らはそう言い合って笑ったけれど。
それがどれほど哀しいことかは、小さすぎてまだ分からなかった。
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ねえ、、人類という種の発生以来、誕生した人間の数、実に数千億。
彼等がその後どうなったか、君、知っているかな?
(携帯を弄る彼を、私は可愛いと思った。普段彼の笑いはもっと『作り』っぽいのだ。私が促すと、彼は嬉しそうに続けた)
死んだ。一人残らず。
それってちょっと凄いよね、そう思わない?
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綺麗な、傷だね。私にも手首の切り方を、教えてくれない?
言い終るか終らないかのうちに、酷く好い音がして、左頬に痛みが走った。
彼女は私を張ってなお、濁った怒りの眼差しでしばらく私を睨みつけ、帰る、と一言呟くと、黄昏る教室を後にした。
ぼんやりと取り残される私。後ろ手に隠したチョコレート。
こうして私の十七歳のバレンタインは終った。