詩人:夜深 | [投票][編集] |
くっきりと
鉛筆でなぞったような線の綿あめみたいな雲が
まぶしい空に伸び伸びと生きてる
一人きりで
座席に座って 頭の奥に
活字を詰め込んでみるの 私は,活字中毒の女の子ね
すると
隣の席のアイツも黙って本を読み出した
何読んでるの、なんて聞けない
ただ横顔を見つめるだけ
アイツが ぱっと本から顔を離すそのときの
一瞬の上目遣いが何故だか愛おしい
…この感情はまさか恋って奴なの
活字にしか興味がなかった私が、まさか、恋?
まさか!
逆様に落ちてくよ私
明日の新しいあたしはどんな明日に生きてるの
息してるの何してるの 恋してるの愛してるの
まさか!
傘をぐるぐる回すように目が回るよ私
昨日の古い私はどんなフィルムに映ってるの
愛してるの恋してるの 夏が来てるの夏はすぐそこ
ぽっかりと
鉛筆でなじったような穴がお月様みたいに
おかしい心にひゅうひゅうと空いてる
ニ人きりで
座席に座って 心の奥に
活字を溜め込んでいるの
アイツも,活字中毒の男の子ね
すると
目の前のアイツが黙って本を差し出した
これ貸すよ、って言ってくれた
ほんとは アリガトって言って笑いかけたかったのに
ただ首をたてに振ってるだけ
アイツが ぱっと本から私に渡すのときの
一瞬のためらいが何故だか愛おしい
…このためらいはまさか両想いって奴なの
活字にしか興味がなかったアイツが、
まさか、
私と両想い?
まさか!
逆様に落ちてくよ私
明日の新しいアイツはどんな明日を生きてるの
愛してるの恋してるの 愛してるの探してるの
まさか!
アイツへの想いをぐるぐるかきまぜるように
ハートが回るよ熱い
今の私の姿は君のフィルムにどんな風に映ってるの
愛してるの恋してるの 君が来てるの夏はすぐそこ
図書室に吹く甘い風
活字よりもときめくものがあったなんて
今まで知らなかった私
知らなくて知りすぎて切なくて
痛くなる 心と身体が痛くなるよ急に
アイツに吹く夏の風
爽やかに私の心を盗み取っていく…