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夜深の部屋


[39] 夏果て姫
詩人:夜深 [投票][編集]


青空に すっかり溶けなじむ
飛行機雲が
私と君とを繋ぐ もろい糸

黄色の花びら 陽だまりに揺れる夏
肌を流れ落ちる水滴 蝉が鳴く
海の匂いに身体を包む 

砂浜の上のお城にはヤドカリ一匹 
まとわりつく鬼胎を捨てて 
滑りこんできた期待の殻に閉じこもる

くらげが海に浮かんで
くらげが海を食べるまで

私は君のことがずっと好きでいられるかな

夜空に とっぷり暮れ落ちる
ほうき星が
私と君とを繋ぐ もろい糸

明日色の花火 水だまりに揺らぐ心
夜を吹きさらす風 照らし出された日陰蝶
海の匂いに想いを包む 

砂浜の上のお城には私ひとり
君を待つ期待を捨てて 
なだれ込んできた歌声に耳を澄ます

くらげが海に浮かんで
くらげが海を食べるまで

私は君のことがずっと好きでいられるかな

海の深さは 海の広さは
はかり知れない
だから 一度落ちてしまうと
どこまで行くのかわからない

恋の深さは 恋の広さは
はかり知れない
だから 一度落ちたとしたら
どこまで行けるかな 泳いでみようか

もぐりこんでみた 夜の海
昨日(かこ)の涙 明日(みらい)の汗が
宝石みたいにきらきら
私の歌に合わせて
魚たちもうきうき踊りだす

人込みの中 かき分けたって
君は見つからないけど
歌い続けて 生き続けてみよう

ねえ今 一番良いところ
サビの前の盛り上がり

そしたら君は無礼にも
私の手を取って
一緒に踊りだすの

さび付いた瞳に恋(まほう)をかければ
君の瞳も 私の瞳も輝きを放つ

さび付いた世界に歌声(まほう)をかければ
花火のように夏が輝きを放つようになる

明日(みらい)に 勢いよく解き放つ
色彩(いろ)取り取りの魔法が
私と君とを繋ぐ 強い糸

2011/07/31 (Sun)

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