詩人:あぎ | [投票][編集] |
そう例えば、
熟したチェリーみたいな赤
血のように、燃えるように
貴方を誘う、赤
ああ、はやくはやくはやく!
はやくしないともうすぐ
お婆様のお家に着いてしまう
白馬でのお迎えなんて望まないわ
葡萄酒ごと私をさらって頂戴
野蛮なキスをして
真っ白なタイツを汚して
少女から大人への階段は
この赤いフードで駆けのぼってみせるわ
ねえ、狼さん
それとも私では不満かしら?
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言葉をつめたガラスの瓶に
お気に入りの水玉リボンを結んで
ネオンカラーのコンタクト
瞳につめ込んでお星様キラキラ
今夜も街に飛び出すの
ねえ王子様!
そんなうすのろ白馬よりも
私のホウキに跨らない?
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まんまる赤い目玉に
ふわふわ真っ白ファー
飛び出す勇気のない兔
出来損ないの生命力
声はすれども姿は見えず
君を囲んで飛び回る
馬鹿な兔 愚かな兔
ピアスだらけの長い耳
嗚呼はやく構って
しんでしまいそう
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キラキラ光る、貴方の星
照らしだすには幾らか役不足な私
嫌々光る、私の私
鏡は嘘つきだわ、美しいだなんて
都合の良いことばっかり言って
宝石で飾られた金色の王冠よりも
飛びっきり甘い、毒入り林檎を頂戴
夜空見たいに磨かれたその光沢に
グロスたっぷりの唇でキスを上げるわ
けれど貴方が両手にいっぱい
愛を持ってきてくれたなら
本当はそれだけで充分なのよ
鏡よ鏡
嘘つきはだぁれ?
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無限回廊駆け抜けて
蕩けそうに甘い、チョコレートの匂い
あの白い肉塊は
私に追わせる癖に私を追いかけている
迷い込んで迷い込んで
少女よ、もっとこの世界に溶けていけ
毒入りのマフィンとシロップ漬けのハーブティー
値札なんてつけて帽子に着られちゃって
泣いてばかりの紛い物
不幸自慢ばかり
強情な女王様
張りぼての乙女
ワンダーランドなんてヘルスに夢ばかり求めて
札束抱えた王子様達は両手を叩く
曖昧ラインを薬で埋めて
両手に剃刀を抱えて少女はまた、迷い込む
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ほんの少し退色してしまった飴玉越しの世界
歪んでいるくせに、ひどく美しい
その鼈甲色の景色が 大好きでした
笑うのがへたくそな主人公達と疲れ切った大人
一度でもよいから、貴方の眼でその世界を見てみたかった
けれどもそれはもう適わない
貴方は私達よりも一足早く、また別の世界を
見に行ってしまったから
先にいって待っていて下さい
私が追いついた時に魅せるものを
子供の様な笑顔で握りしめて
今敏監督に贈る
ご冥福をお祈りいたします