詩人:アイカ | [投票][編集] |
近所のおばあちゃん
いつもアタシを心配してた
夏になれば
アザと根性焼きが
生々しく
袖から見えて
挨拶もろくにしない
薄汚くて
生意気な子供だった
私なんかを…
おばあちゃんは
一日も休まず
毎日神社を
掃除してた
初めて
おばあちゃんを見た時には
すでに右手の指が
全部無くて…
聞いたら
小さいときに爆弾で
飛んでったって
笑ってた
本当かどうか
分からないけど
それでも
ホウキで毎日
掃除をしてた
『ご飯食べたの?』
『食べてない』
『じゃこれもっていきなさいよ。』
あんぱんくれた
おばあちゃんは、
笑わない私に
いろんな事を教えてくれたんだ
空はなんで青いのか
鳩はなんで飛べるのか
昔の歌や
戦争の話
おばあちゃんは
独りで、
私も
独りで、
独りと独りが
一緒に居たら、
二人になるって
だから
寂しくない
寂しくなんてない
寂しくないけど
涙が出たんだ
おばあちゃんの手は
暖かくて
しわしわで
素敵だった
『おばあちゃんね
老人ホームに行くの
だから、貴方とお話するのも今日で最後』
ずるいと思った
私も一緒に……
ってそう言ったら
おばあちゃんの
小さい目が泣いてた
寂しくなんてないよ
二人だもんね
蝉が鳴いて
うるさくて
耳が
千切れてしまいそうに痛かった
赤いランドセルが
強い光で潰れてた
二人で泣いたのは
そのせいだもん
寂しくない
寂しくなんてない
それは夏の暑い暑い日
神社の木陰の
しわしわの思い出