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ヒギシの部屋


[121] 笑いピエロ
詩人:ヒギシ [投票][編集]

ある日ピエロが
遠くの人に少しだけ近付いて
一人ケタケタと笑ってみせた
遠くの人は不思議がった
それでもピエロが
余りに楽しそうに笑うので
自分もクスリと笑ってみせた

何日も二人で笑い続けて
ふと
遠くの人がピエロに近付こうと
ゆっくり歩み寄った
するとたちまちピエロは
全力疾走で消え去った

またある日ピエロが
今度は別の
遠くで笑っている人に
ほんの少しだけ近付き
ケタケタと笑ってみせる
遠くの人は
嬉しかったので
ピエロに走り寄った

ピエロは全力疾走で
消え去ろうとしたものの
遠くの人がまだついてくるので
三日三晩走り続けた

ピエロはぴたりと足を止め
諦め顔で振り返る
遠くの人は今や
近くの人になって
やっと追い付いたと
笑みをこぼした

近付かれては
遠ざかっていたピエロだったが
しつこい敵に出会ってしまった

近くの人の存在は思いのほか
居心地がよかったが
こんなに疲れるのは絶対もう嫌だと
ピエロは強く思った

今日もまた
素早さを増したピエロが
遠くでケタケタと笑っては
逃げ出している

二人でケタケタと笑っては
駆け出している

2004/05/07 (Fri)

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