詩人:もうつあると | [投票][編集] |
鳥がさえずり
庭には鈴蘭が誇らしげに
咲いている
これが
神秘の姿そのものなのに
仕事に染まった心たちは
今日も何もかまわず
神秘を通り過ぎる
帰りの道中
残り香だけでも
彼らに与えなよ
灰色の空の下
僕は憂鬱だった
日々の生活に終われるだけの
経済人間が
無感情な働き蟻にしか見えなかった
だれか
日常と同化した
神秘の形を
ここで浮かび上がらせてくれ
誰か才あるものよ
海に解けた
湧き水を
そこから蘇らせてくれよ
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***(名詞)
僕たち
国民一同は
清純なる愛国心にのっとり
正々堂々と
野蛮な敵対国を撃退し
八紘一宇の理念の実現に
この身をを捧げることを
ここに誓います
昭和****
*月*日
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彼は偉大だった
彼は一国の将来に関する
ビジョンが無かった
彼は自分の言葉で
国民に実情を話す能力を
持っていなかった
にもかかわらず
彼は総理に選ばれ
総理として
短いながらも
活動した
偉大だった
能力を超えた仕事は
普通は任されない
任された彼は
偉大だったのだろう
偉大な男だったから
選ばれたのだろう
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人間というのは
愛だの恋だの
彼氏だの彼女だの
自分の幸福を思って
悩んで
あきれるくらいに
苦しんで
涙を流して
それが涸れたら
手首を切って
恋愛とは
美化されすぎたエゴイズム
それは知っているよね
みなさん
恋という舞台で
どれだけの役を演じてこられたのか
知りませんが
幕が開きましたよ
公演の時間だ
どうぞ
お行きなさい
役者たちよ
悔いの無いように演じきってきなさい
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私が何もかも失って
絶望というレールすら
そこから敷かれていないというのなら
私はどうやら闇の中で
首を吊るしかないようだ
縄を首にかけて死ぬのは
随分と人気のある手段だそうで
年間、どれだけの人が
この手段で救われていることか
ここに私がいる
ここに縄がある
梁が上にかかる
これだけの好条件をもちながら
絶望に明け暮れるより
僕は
一度でも喜悦した記憶を道ずれに
死んでしまおう
ここには富も名誉も
哀れみも憎しみも
ないし
誰もいない
しかし
私がいる
病み疲れている
私だけが
ここにある
今はまだ
ここにある
死ぬまで
影だけは
私の味方だ
お前だけは
影よ
ありがとう
後は私の惨めな
梁から吊るされた
姿だけを
地上に落としてくれ
それだけが
最後の頼みだ
地で彩られた
この地上に
血に染まった
私の姿を
落としてくれ
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ふにゃふにゃとした
Japan
という
ひとつの列島
そこに
おびただしい
こけしが
生えて
生えて
今日も
悲痛の産声が
僕を震撼させる
末世にも
こけしは
増え続ける
もう
ごめんだよ