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もうつあるとの部屋


[12] 赤の影
詩人:もうつあると [投票][編集]


私が何もかも失って

絶望というレールすら

そこから敷かれていないというのなら

私はどうやら闇の中で

首を吊るしかないようだ

縄を首にかけて死ぬのは

随分と人気のある手段だそうで

年間、どれだけの人が

この手段で救われていることか

ここに私がいる

ここに縄がある

梁が上にかかる

これだけの好条件をもちながら

絶望に明け暮れるより

僕は

一度でも喜悦した記憶を道ずれに

死んでしまおう

ここには富も名誉も

哀れみも憎しみも

ないし

誰もいない

しかし

私がいる

病み疲れている

私だけが

ここにある

今はまだ

ここにある

死ぬまで

影だけは

私の味方だ

お前だけは

影よ

ありがとう

後は私の惨めな

梁から吊るされた

姿だけを

地上に落としてくれ

それだけが

最後の頼みだ

地で彩られた

この地上に

血に染まった

私の姿を

落としてくれ


2009/10/20 (Tue)

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