詩人:獏 | [投票][編集] |
:不意に夢に再生される記憶:
夜明け前 布団をはねのけ 時計を確かめた
A,M,3:15
深夜に見た夢がまだ
掻き毟りたくなる かさぶたみたいに
僕の 内側 に こびり付いている
初秋の夜の 生ぬるい熱気は
鬱陶しいくらい 根気よく
ピッタリと肌に寄り添ってくる 獣 みたいに
僕の全身の体毛を
総毛立たせた
その気配を振り払って
洗い流せたとしても
まるで 知らないうちに
身体から剥がれていく
垢やフケのように
ハラハラと ジワジワと
滞る事無く
僕の 内側 に
湧きだして溜まっていく
繰り返し 再生される
記憶 は
受け入れるしか しょうがない
現実だったのだし
今も続く 事実でもあるのだから
夢は 過去の事実よりも
残酷だった
しかし
夢から受け取ったものは
昔怯えていた 恐怖 では無くて
行き場の無い ジレンマと
虚しさだった
空々しい程 片付けられた部屋で
起きだした鳥達の 声を聞いている
夜には荒れていた海が
今は もう
穏やかに のっぺりと
光っている
僕の 不快指数は まだ
下がらない
凪いだ海面を ボンヤリ見つめながら
泡立ち続ける 内側 の
ざわめきを 一すくい
両手ですくっては
冷まし続けてみる
消せない思い出を
取り出しては繰り返す
夢と現実を
照らし合わせながら
一すくいずつ
冷まして
内側の水面が 凪いだ海のように
静かにたゆたうまで
繰り返す
今日の日差しに 包まれる頃
夢も現実も
あるがまま内側に住まわせたら
今日の事を 始めよう
夢も現実も
それぞれから伝わる気配も
抱えたままで
今日の事を 始めよう
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「あなたが生まれてきたのは人を愛するためです」
占いにそう書かれていた
四、五日前にそれを見つけて
占いの結果にじんと感動した
でも受け入れがたくて
鼻で笑い飛ばした
愛することが怖いのに
また誰かを愛していくなんて
出来っこないじゃないか
愛して
拒絶されて拒絶して
憎んで恨んで淋しくて
辛くて今があるのにって
占いの結果に怒りが湧いてきた
なのに
やっぱり誰かを
愛していたかった
頭も身体も震えだして
愛することを恐がっていたから
怖くなくなるように
人全部を拒絶して強がって
どんな人も自分のそばには近づかないように
虚勢をはっていた
嫌いな人は皆拒絶したくなってた
でも違ったの
怖いけどやっぱり人が好きで
生きている動物も植物も
みんな愛しくて
愛せない自分が嫌いだっただけ
憎んでしまう気持ちを
受け入れたくなくて
怖くて無理矢理
怖さを飛び越えようとしていただけ
気付いてみたら
私は生きているみんなが
好きで愛しくて
占いの言葉はありがたくて
本当はせつなくて苦しくてにがくて
愛するために生まれてきたのなら
良かったのにって思っていたの
いろんな気持ちが
次々湧いてくるから
怖くなって湧いてくる気持ちに
また
蓋をしようとしていただけ
見ないフリしようとしてしまっただけ
どんな人も
苦しんで悩んで生きてる
どんな命も
今を精一杯生きてる
それらみんな
愛しくて切なくて
一緒に生きていける事が
嬉しくてありがたくて
愛さずにいられない
私と今を生きている
人々も命もみんなみんな
憎んでも恨んでも怒っても
愛したい
愛されたい
聞こえますか?
私は生きています
同じ時を生きているみんな
大好きです
過去に共に生きていた皆さん
聞いてください
愛してましたよ愛してくれてありがとう
ああ やっと
優しくなれそうな気がします
愛してるよ
この星に生まれてきた
すべての生命たち
私はちっぽけで弱くて
出来る事もほんとに些細な事だけど
愛してるよ
愛してるよ
精一杯
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私 ね
幼かったから
あなたが
どんなに傷ついていたか
分からなかったわ
私と同じように幼い人は
同じ事をしても
あまり傷ついたりしなかったし
侮辱されたと
怒っただけだったの
あなたは
とても傷ついたのに
私も
あなたが
拗ねているのかと
思っていたくらいよ
たくさん
時間はかかったけど
私
少しだけ大人になれたみたい
そうしたら
あの時の
あなたの痛みが
自分の痛みになったの
気付くのが
遅くて
無神経な事も
してしまった
あなたは
そんな私を
何も言わずに
やさしく
見つめてくれたから
初めてが
たくさんあった
あの頃よりも
とても
とても
嬉しくて
暖かくて
ありがたくて
今度こそ
本当に
大切に
大切に
この気持ちを
あたためていきたいと
思ったのよ
ありがとう
あなた
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秋の終わりに
季節外れの小さな花が
花が
咲いていたの
雪虫があたり一面に
飛び交い
雪が降る日が間近に
迫っているのに
小さな花は
水溜まりに張った氷に
その命を
写していたの
そんなに
頑張らなくても
いいのに って
こんな季節外れに
うっかり芽吹いた花が
もどかしくて
私はその花の
傍を通るたびに
ただ見つめていた
切なくて
儚げだけど
お日様を
命のかぎり
浴びようと
凛と咲き続ける
小さな花に
私は
いつの間にか
勇気をもらったの
土手の細い道
車が行き交って
通る人も
小さな花には
誰も気付かず
車も人も
崩れかけの
道を通る事に
精一杯で
私が見つけた
その花は
何度も何度も
踏み付けられて
それでも
花は花らしく
つぶれた葉や茎を
お日様に向けて
命のかぎり
だだ咲いていたの
秋の終わりの
短い日の中
踏み潰されても
また空を目指す
小さな花を
私は小さな鉢を持って
私の部屋へ連れてきたの
これから厳しい冬が来る
部屋の中も寒いけれど
この部屋で
踏まれる事も
車に怯える事もなく
いままで懸命に
咲き続けていた花と
ひっそり寄り添うように
生きていこうと
思ったの
毎日毎日
花に語り掛けるうちに
小さな花は
もう一度
小さな蕾をつけた
私は嬉しくて
ほんの少し
鉢に肥料をあげたの
小さな花は
新たに丈夫な葉を茂らせて
幾つもの
蕾を伸ばして
冬間近の
寒い朝に
可愛らしい花を
咲かせたのよ
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澄んだ夜空に
流れ星ひとつ
瞬きしないで
消えるまで
暗い夜空に
流れ星ふたつ
見つめるだけで
ちょっと疲れちゃうね
きらめく夜空に
たくさんの流れ星
たくさんの星から
こぼれ落ちて
届いたかな
届いたね
僕の所に
夢とうつつの
間から
流れ星降って
彗星からの
プレゼント
地上のイルミネーションと
溶けてきらめくよ
流星群
天体ショーって
言うけど
あれは
ショーなんかじゃないよ
時の流れを
地上に届ける
命の讃歌
彗星が確かに
今も夜空を巡っていく
せいいっぱいの
時の煌めき
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好きって
気持ちに
蓋をしなくて
いいんだよ
好きって
素敵な事だよね
誰かを
とっても好きになると
傷ついたり
悲しかったり
切なくなったり
嬉しくなったり
いろんな気持ちが
入り乱れちゃうけど
全部宝物だね
幸せだね
好きになった自分を
もっと
素直に
嬉しいなって
思えたらいいな
誰かを好きになれるって
素敵な事だよね
怒ったり
泣いたり
浮かれたり
落胆するときもあるけど
好きだから
感情が溢れてくるんだね
暖かいお日様のぬくもりに
似てるね
好きって思えるって
素敵な事だね
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静かな部屋で
小さな音で
ビートルズを聞く
夜明け前
まだ通勤の車の音もまばらに
街は朝日を待っている
身を切るような寒ささえ
季節を私に伝えてくれる
雪が舞い
風が踊り
氷が輝いて
冬を引き立てている
私が静けさに漂って
ゆるりと動くと
冷たい風が頬を引き締め
乾いた空気に
体から吹き出す温もりが
今日一日分の
優しさになって
しっとりと私を包む
おはよう
おはよう 冬の朝
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今夜は
おやすみ
ゆっくり
おやすみ
なんにも心配しなくて
いいから
もう
おやすみ
ちょっと早いけど
頑張ったね
暖かい部屋で
深く深く
おやすみ
外は吹雪だから
暖かい布団に
くるまって
安らかに
幸せに
おやすみ
おやすみ
愛しい人よ
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みんな誰かみたいになりたいって思ってる
自分以外の誰かに
身近なあの人だったり
憧れてるあの人だったり
到底手の届かないヒーローだったり
自分にはない何かを誰かの中に見つけて
嫉妬したりひがんだり
忙しいね
みんな誰かみたいになりたいって思ってる
どうしたらあの人みたいになれるのか
悩んで苦しんで
諦めてまた憧れて
好きになって真似してみて
無理してるって気付いて
焦ってるって落ち込んで
やめられない憧れに
振り回されながら
諦めたくなくて何度も真似を繰り返して
まだまだ届かなくてじたばたしてるのに
誰かに あなたみたいになりたいって言われて
戸惑ってまだまだなんだよって
叫びたいくらいいらついてるのに
どっかで嬉しくて邪険に出来なくて
もしかしたら自分て捨てたもんじゃないかもなんて
浮かれてみたり
このまま突っ走っちゃいたくなってみたりして
ふと
あの人と自分を比べてみたら
情けなくなって
やたらに暗くなってみたり
開き直ったり
ほんと忙しいね
無駄な事なんて無いって
誰かが言ってくれるけど
妬んでたらちっともそんなふうに思えなくて
暗がりに逃げ込んだまま
自己嫌悪にマゾヒスティックにひたってみたりして
どっかから聞こえてきた
馴染みの歌謡曲のよく知ってたつもりの歌詞に
いつのまにか励まされて
意味なんか考えずに口ずさんでた歌に
悲しみやら情けなさやらいろんな感情が詰まってたって気付いて
ロングヒットの曲の深さにあらためて感動してみたりして
口ずさんでみて自分にも歌が歌えるって気付いて
歌いながら泣いちゃったりして
あの人もたくさん悩みがあったはずだって
少しだけやわらかくなれた気がして
また焦って悩んで右往左往するけど
憧れるのも歌うのもやめられないんだって
思った
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外は日暮れて冷たい風が強く吹き抜ける
すっかり葉を散らした桜の枝先がヒョロヒョロ揺れてる
つのる虚しさと苛立ちで麻痺したココロが
木枯らしに吹かれたいと小さく疼くので
ヨタヨタつまずきながら歩いていた
腹に溜まった重りを抱えたままよろけた
瞼に浮かんだ出口は
遠かった が
たどり着いた自動ドアの向こうでは
寒空に 裸の桜の幹がすっくと立っていた
氷のような風の中 すっくと夜空を目指して伸びていた
ほんのり海の匂いがする風が髪を踊らせる
冷えた大気を吸い込むたびに 足取りは軽くなる
抱えるほどもある幹を見つめながら
ヒリヒリする寒さを身体中で感じていた
ぐいっと背を反らして
桜の幹を地面から順に見上げる
町明かりにぼやけた夜空に
くっきり浮かび上がるオリオン座が
骨だけになった細い枝先の真上に
去年と同じ姿で輝く
「あれがオリオン座だよ」と
初めて星座を教えてもらった幼い私が
星座の夜空を占める大きさに
星座が持つたくさんの物語の歴史に
理由もわからず芯から震えたあの時と
変わらない姿で輝く
また会えたね
毎年この季節に見つめてきたよ
今何してる?
まだそこから動けずにいるの?
問い掛ける言葉はそのまま返ってくる
身体の内側から
ぴぃぃいぃぃん と音が聞こえてくる
音に合わせるように歪んでいた背筋が
バキバキ鳴りながら伸びて
夜の静寂にメロディが流れだす
何も変わっちゃいないよ
でもね
また聴こえてきたこのメロディが
私の足を震えさせるから
もう一度一歩踏み出すよ
私は大きく深呼吸して
来た時とは違う足取りで
帰り道を歩きだした