詩人:獏 | [投票][得票][編集] |
丘を登れば
一面の草原
草の葉の隙間から
朝の光が射し込んで
丘陵が黄金色に輝き出した
吹き抜ける風は
陽光と花びらをほころばせ
野花の甘い香りを運んでくる
見渡せば
あちらこちらに飛び交う
小さな無数の蝶々
幻想の風景に
迷い込んだ私は
丘の頂きまで
一息に登る
体いっぱいに朝日を浴びるために
光をあびて
光に満たされて
指先まで
髪の一本一本にまで
敏感にふくらむ感覚
体の内側まで
血管も
臓物も
骨も
すっかり光を含んで
膨張していく
網の目のような
血管の中を巡る
血液の
一粒一粒まで
光にさらして
ふと気付くと
花畑を飛んでいた蝶が
私の体をすり抜けて
何羽もの蝶達が
次々に
血管の間や
骨の隙間を
飛び交って……
私の体は透きとおり
輝きながら
粉々に砕かれて
朝の風に乗って
舞い上がる
私で 有った
一粒が
乱反射しながら
空に吸い込まれて
一羽の
小さな蝶になっていく
幻想の中で
私は
祈りをとなえよう
この願い届くなら
どうか
無数の蝶になった
私の欠片が
その短い生命を
逃げ出すためじゃなく
ひたむきに
生きていくために
だだ
そのためだけに
羽ばたいていきますように
思い悩み
立ち止まる事など
知らぬまま
ひらりひらり
ひたすらに飛び続けて
光と 風に
とけるように
空へ
帰っていけますように