詩人:クィルテット | [投票][得票][編集] |
カサカサ…
カサカサ…
黒い物体が私の視界を横切る
と、同時に母の甲高い悲鳴
シューと言うスプレー音と羽を羽ばたかせる音が響き渡る
まるでそこは戦場だ
黒い物体にとって
人間でも吸い込むと痛いそのスプレーは『殺虫剤』と言う名の『銃器』
やがて黒い物体にその銃は命中
決着はつき黒い物体はコロリとひっくり返り
しばらくして息絶えた。
母はその黒い物体をどうしても触れない為、父が返って来たら片付けもらうそうだ
私はさっきまで自由に動いてた黒い物体を見た
私も確かにこの黒い物体は嫌いだ
でも何故か殺される時を見ると胸が痛む
別に殺生が嫌いでは無い
どちらかと言えば好きな方だ
ただ、この黒い物体は目に付くと殺されると言う(私の家の場合の殺し方は小さい黒い物体だと特に惨い)
あまりに酷い仕打ちを受けて居るので
時折可哀相に思った
幼心に植え付けられた『黒い物体に対する恐怖と嫌悪』は一生消えないだろう
だが、人間として慈悲だけはかけてあげた
3m位離れた所で私は手を合わせて目を瞑り
『今度この黒い物体が生まれ変わったらもっと幸せな環境に生まれ変れます様に』と祈った。