詩人:夕凪 | [投票][編集] |
夜が更けて
灯りは落ち
町も木々も風も
眠る
深い深い
静けさの中
あの暗い
貨物列車だけが
朝へと
忙しく
走り抜ける ─‥
ほんの一時
やがて音も
遠ざかり
再び訪れる
静けさの間際
遥か遠く
見上げた空
星が一つ
きらり流れて
消えた ─‥。
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もうあの夕日は
乾いて
ぱりぱりわれて
落ちるだろう
蛇口のあたまが
なくなって
雨乞いしても
へんじもないや
いやに
なっちゃうな
こんな
あおい星なんて
この目にあるのは
風化したよな
人々の かげ
生き物の こえ
切り売りされた
ギザギザもよう
これって
いったい
なんなのさ ─‥
ほんといやに
なっちゃうな
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たとえなにも
しなくても
たとえどこへも
いかなくても
まわりは
ぐるぐるまわり
まわりは
ぜんごさゆうする
たとえなにも
しなくても
わたしは
しらずしらず
うごかされ
たとえどこへも
いかなくても
わたしの
いばしょは
かってにかわる
ひとところには
とどまれない
いきているとは
たぶん
そういうこと
なんだろう
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百色ほどもある
色を差し出され
好きな色を
選べと言われる
これだけの種類が
あるのだから
必ず一つは
あるだろう、と。
選べません、と
答えると
驚きと怒りで
何故だと聞かれる
単色では
ないのです
いくつも重ねて
見付かるのです
一番好きな
一色が ─‥。
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マングローブの
根っこに座り
水平線に
ピースした
真夏の避暑地
見付けた日 ‥
見上げれば
私の空を覆う
緑の葉
静かに凪く
水面に
木漏れ日を
幾つも落とし
煌めく ‥
マングローブに
抱かれて
生命の音を
聴いていた ‥
そよぐ風の音
ひんやりと
焼けた素肌に
心地よく
長い眠りを
誘う様に
いつまでも
どこまでも
優しく
揺れていた ─‥
マングローブに
抱かれた日
夏の記憶
淡く遠い記憶 ─‥。
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綺麗な色を
塗りすぎた
パレットに
鈍い光の
差し色じゃ
ぼやけた
曖昧な希望の図
主役になれない
暗色を
混ぜ合わせて
汚したパレット
僅かな
光の差し色は
馴染まない
バランスで
一際綺麗に
映り込んだ ─‥。
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肌を撫でる
恐怖の足音
闇の隙間から
斬り付ける ─‥
瞬きもせず
赤い眼を凝らし
怯え立つ
胸を裂いて
差し出せと
こればかりは
差し出せぬと
赤い涙を
流すばかり ─‥
やがて赤は
闇をも染めた ─‥
闇の終わり
訪れる頃
何事もなく
陽は昇り
この世は
美しき世界と
無情なまでに
謳うばかり ─‥。
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痛みを
知らずして
痛みの何を
語れるだろう ─‥
人の愛に
触れまいとして
愛に何を
求めるのだろう ─‥
怖れる事を
怖れないで
失う前に
失くさないで ─‥
きっと
誰しも臆病で
誰しも勇敢だ ─‥。
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頑なに
握り締めた
手のひら
指の隙間から
滲み伝う
独りよがりな
後悔の雫
誰に許しを
請うというの ‥
もうずっと
許されていた ‥
この道は
いつか
歩いた道
この空は
いつか
仰いだ空
あの場所は
いつか
約束した場所 ─‥
いつか ‥
優しい響きで
すぐ傍に
今もある ─‥
この今は
いつか居た
いつかを連れて ‥
この今は
いつか振り返る
いつかになる ‥
開いた
手のひらを
空に翳したら
朝陽の
柔らかな熱が
雫を溶かして
新しい輝きを
今 拡げた ─‥。