寒い冬の日 電車に飛び込んだ あの老人の 孤独を知る者は 何処にもいない ‥ 線路脇に残された 灰色の杖 取り除けない 最期の残骸 ‥ 私は泣いた 途方に暮れて 動けず泣いた 私の乗った電車に 飛び込んだ老人 知らない老人 杖だけが 強く焼き付いた あの老人の 本当の孤独は 今もきっと あの杖しか 知らない ─‥
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