詩人:こうさぎましろ | [投票][得票][編集] |
雨おちる午前
アスファルトの湿ったにおい
とうもろこしが
おくるみに抱かれた赤子に見える
あねもねは露を浴びて
しおらしく、しおれている
夏の歩道に散りばめられた
はんてん模様の落葉
二枚対になった蛾の死骸
踏まないように避けて歩く
天分を全うせよと誰かがいった
右手は握りしめすぎて痺れてしまった
左手に掴んでいる裾をやっと離せたのに
足元を蛾が這い蹲るようにして
横切る
死にかけているの?
立ち止まって見送る
どうして生まれたの?
意図すらもわからない質問が浮かぶ
寂しくしていると
あの人がくれた少し高価な菓子
あれが急に欲しくなった
痺れた手は離すのを怖がっているだけ
もういいよ
もういいのよ?
傘の骨に
雨滴がつたう
右折した車がじりじりと
ゆっくりと横切るワタシを見送る
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