詩人:番犬 | [投票][編集] |
ちいさく頼りない炎
気まぐれな風に吹き消えそうな炎
それは人間
それは彼女で
俺の愛すべき女で
全世界にただ一つの美しい炎
残り僅かなキャンドルの炎だ
詩人:番犬 | [投票][編集] |
ひどく不安定
指がふるえてる
笑えない
時間が必要だ
さっきまでは楽しく会話してたんだ
急に閉じた窓に
雨が降り出して
感情が外に出られなくなったような
窮屈な感じ
もっと強い俺を必要としている
それは彼女がではなく
もっと強い俺を必要としている
それは誰よりも俺自身が
もっと強い俺を必要としている
ただそれだけだ
沈黙
詩人:番犬 | [投票][編集] |
俺の彼女は六年前は癌だった
すぐに取り除いたらしいが
それでも癌には変わらず
そして先週に健康診断の結果
再検査という通知が来たと
11月27日の午前3時
電話の向こう
本人の口から
ついさっきにそれを聞いた
告げる決意の恐ろしさに
震える声に滲んだ涙が
痛々しく
重い空気で呼吸が苦しかった
混乱した頭に断片的な情報
子宮周辺の癌だとは理解したが
それがどれほどの深刻さかは分からない
何も分かっていないのかもしれない
彼女が背負った物の重さも
これからの足取りも
何も分かりはしないのかもしれない
かけたい言葉が見つからず
気持ちだけが激しく泣いている
正体不明の何かを憎み始めてる
病魔という奴はあくまで静かに
足音もたてずに
人の内部に
心の内部に
強靭な悪意を持って忍び込むものらしい
それは邪悪で残酷な力強さで
俺達を蹂躙しようとしている
抵抗する手段は
病院の医者や看護士にすがる事
祈れる物全てに祈る事
それ以外には何も無い
俺にできる事はなにもないんだ
誰を責めることなんてできやしないのに
何度も謝る彼女が悲しく
他の人を探してと言われても
戸惑うばかりの俺は一体何様なんだ
詩人:番犬 | [投票][編集] |
まあ
なんとかやってますよ僕は
毎日楽しいです
ふざけすぎて怒られちゃって
ふてくされたりもするけど
楽しいほうが多いわけで
実感としてそれを意識した時
考えることは
たとえば
ちいさな花の種が
芽を出して
咲いて枯れては
種を落とす
みたいに
何かがあって
何かが起こる
そういう意味での
つながる ということで
どうにかこうにか
僕という存在は生きているんだろうな
と思ったり
たとえば
誰かの優しさを受けては
誰かに返す
誰かが誰かに返しては
僕に優しさが届くように
つながる ということで
どうにかこうにか
僕という存在は生きているのだと
まあ
楽しいですよ
ありがとうございます
それしか言えませんけど
誰に対してとかじゃなく
なんとなぁく
言いたくなる気分は
たぶん幸せと呼ぶんだと
勝手に思ってます
詩人:番犬 | [投票][編集] |
街の路上で思ったんだ
見飽きるほど見上げた星のない夜空を
街の路上で思ったんだ
街灯の切なさがやけに輝いてる
街の路上で思ったんだ
この世界全てが俺にとっては
街の路上で思ったんだ
月だけが見守る孤児院なんだと
街の路上で思ったんだ
宇宙の命は長いけど
街の路上で思ったんだ
この冬を越えられない寒さの犠牲者を
街の路上で思ったんだ
街の路上で思ったんだ
街の路上で思ったんだ
すり減った靴底に穴が空くまでは
まだまだ歩き続けなきゃならない
この街のどぶ川の匂いや生き物や
光の交差点と明け方のスピリットや
くたばってしまったちっぽけな虫けらや
逆らい続ける奴だけに見えるビートや
ピートの香りがきつめなモルトで
俺はまだまだ流れていきたい
街の路上で思ったんだ
踊る事に疲れきって向かう先は
街の路上で思ったんだ
とても冷たい路上の温かさだって
街の路上で思ったんだ
干からびたポスターと枯れ草は
街の路上で思ったんだ
この冬に捧げる秋の名残だ
街の路上で思ったんだ
夕暮れって奴はいつも泣けてくる
街の路上で思ったんだ
月は全部を見ているのかなって
街の路上で思ったんだ
街の路上で思ったんだ
街の路上で思ったんだ
俺は世界のどこにいるんだろうって
詩人:番犬 | [投票][編集] |
街の路上で思ったんだ
靴底はどれほどすり減ったのかなって
街の路上で思ったんだ
ネオンがあんまりにも悲しかったから
街の路上で思ったんだ
退屈も怠慢も隣に置かず
街の路上で思ったんだ
孤独と俺の二人きりで
街の路上で思ったんだ
ゴミくずだらけの祈りに満ちた
街の路上で思ったんだ
月は全部を見ているのかなって
街の路上で思ったんだ
街の路上で思ったんだ
街の路上で思ったんだ
灰色に飛び散る冬の姿を
コンクリートの街の上空で見つけた
希望も情熱も失ったカラスが
風の吹かない街を飛ぶのをやめて
上空を見つめているのを見つけた
もうあそこには行けないのだと
諦めを浮かべたくちばしの向こうで
ぽとりと落とした宝石を
街の路上で思ったんだ
氷点下の冬に抱き合う相手は誰かと
街の路上で思ったんだ
そいつは肉体を持たないけれど
街の路上で思ったんだ
そいつだけは俺を裏切らない
街の路上で思ったんだ
今も隣で震えて凍える
街の路上で思ったんだ
孤独だけが俺の頼りだと
街の路上で思ったんだ
ネオンの虹がまた咲いてるって
街の路上で思ったんだ
街の路上で思ったんだ
街の路上で思ったんだ
慣れ親しんだ心地よい空気を捨てた奴の
安上がりなアクセサリーは売っても
媚びだけは売らないと決めた奴の
一歩踏み込んだ奴の足にブルースを
寒さに震える奴の心にバラードを
街の路上でしか見つけられない
そんな汚れたストーリーの主役達に
時代の影で忘れられてく悲しみを
続く
詩人:番犬 | [投票][編集] |
JP.2006秋の終わり頃
世界の片隅から送るぜ
ちっぽけな虫けらのボイス
ストレンジ・ツリーの果実を
ジャムにした言葉を詰め込んだ価値観
人生は靴底をどれだけ減らしたか
それにかかっていると言って過言ではない
楽な乗り物もいいかもしれないが
それは死をも早く連れてきてしまう
揺れても揺れても微動だにしない
確かな足腰は裏切りを知らない
まだまだ先は長く
湿っぽい暗さと寒さと
時たまの光のどしゃ降りと
深さ無制限の闇の繰り返し
進むべき道はどちらですか?
聞いたって誰も教えてはくれないよ
自分で選ばなくてはならないぞ
踵に何を感じさせるか
瞳に何を焼き付けるか
選べる道の数はかぞえるのは飽きたろ?
自問自答はするが答えはすでに出てる