詩人:番犬 | [投票][編集] |
ナイスミドルな新聞記者さん
気持ち良いほど折り目のついたスーツ
ピカピカに光った革靴とオメガの時計
万年筆とメモが武器らしい
そんな善良市民の塊みたいな
あんたがいったいなんの用だ?
俺たちの名前と商売を知りたいって?
いいよ教えてやるぜ
俺の名前はルー・ドッグ
相棒の名前はイル・バッファロー
商売はよくある裏の道さ
イルの野郎は人の二倍は生き急いでる
この街一番のルードボーイ
そして俺の自慢の相棒だ
世間様は俺たちを見下げる
ゴミを見る目で俺たちを見る
だけどそれでいいんだ
ほめてもらうなんて金にならない
今日のランチの足しにもならない
無駄な説教はよしてくれよ
そんな暇が少しでもあるなら
縄張りで客を引っ掛けなきゃな
こう見えても努力家なんだぜ
毎日書かさず取引の連続
イルの野郎が客を集める役
俺は公園のトイレにヤクを隠す役
昔から手口は変わらないが
バレる心配はないのさ
需要と供給はうまくできてる
社会の底辺で成り立ったシステム
慣れればこれはこれで心地良い
落ちてくる埃を食い散らかすだけの
ダニみたいな快適さでな
あんたらから見れば最低な生活だろうが
俺たちから見れば最高な生活さ
なぜ悪い事をして金を稼ぐか?
馬鹿な質問だと思っちゃいるが
一つの質問を答えとして返そう
善良に理由を求めないくせに
なぜ悪にだけは理由を求める?
俺たちにはその答えが分からないからさ
詩人:番犬 | [投票][編集] |
よおブラザー
お前の横顔が悲しいんだ
憎しみばかりで彩られてさ
貧乏さえも恥じるお前の横顔が
俺は心の底から悲しいんだ
なあブラザー
無言はよして話をしようぜ
たとえばの話だ
もしも自由のピストルが
なんでも殺せるピストルが
俺たちの手の中にあったなら
いったい何を撃ち倒そうか
よおブラザー
俺に教えてくれないか
昔つきあってた売春女か
それとも酔いどれたお前の親父か
お前をそこまで追い込んじまった
そいつの正体を教えてくれよ
よおブラザー
お前が最大の過ちを犯す前に
俺がお前を撃っちまうかもしれないよ
そうすりゃお前は自由になれるからな
俺はその後自分の頭を撃とう
自由ってのはそういうことさ
なあブラザー
お前の横顔が悲しいんだ
笑ってくれよ
詩人:番犬 | [投票][編集] |
何も知らない
何も分からない
宇宙のどこに行けばいいのか
朝も昼も夜も受け入れてはくれない
またブルースの音色に全ては溶け込む
グラスで傾いた氷を見つめる
シャッターを閉めた商店街や市場を歩き回り、疲れ切って部屋に帰る
また夜から朝の橋を渡る
野心的バッファローは眠らない
また銃声のような足音が聞こえるが、フラスコの中で沸騰する液体に心奪われ、一瞬の旅の夢を見る
地球の全て、煤けるパイプの仕組みの中を旅する夢を
退廃は昔からの存在で、それは決して終わらない
移り行く朝も昼も夜も、季節さえも、濃度を増していく助けにしかならないのだ
昨日まで錆のなかった刀にも、今日の夜には錆が付いているかもしれない
また、昨日までは完全な球体だった天体も、今日の夜にはフォボスのように無惨な形に変容しているかもしれない
歴史や地理は必ずつながり、それは人のユニティとピースを生み出したが、その背後のピースメーカーも忘れてはならない
銃砲、歓喜、憎悪、差別、号泣、日照り
どれを取っても無関係ではありえない
アメリカのトウモロコシ畑の不作が日本の牛肉の値を上げるように、遠くの出来事はタイムパラドックス寸前の薄い絆でつながっているのだ
地球の裏側の少年の憎しみが波となり、我らに害を及ぼす事もまた必然だ
同じように我らの行動の一つ一つは世界を駆け巡り、インスパイアされ、それは未来の世界にも波及する、絆なのだ
と落ちた後の太陽を想い、こんな事を思った
退廃的呟き
終わり
詩人:番犬 | [投票][編集] |
部屋の青いカーテンの隙間から日溜まりの欠片がポトリと落ち込んできたが、時計は未だに回らず、変わらず昼間の三日月は鋭く、コンキスタドール全世界を手中に収めた種族の憂鬱と黄昏の味は苦かった
今日は今日を終わろうとはせず、いくらかでも明日に食い込もうとするが、日めくりのカレンダーは残酷だ
朝は朝として、独立の区分が支配しなければならない人類の都合で時間は決められる
暇そうな太陽を差し置いて鳩は餌を啄み、あくびを浮かべたタクシードライバーとのリフレクション
排気ガスとスモッグにまみれた街灯は昼間も点灯したり消えたりを繰り返している
鮮やかなドレスと、高級な古着とを着こなしたレディフォックスは、腰にセックスを掲げダンスするようにステップを刻む
路地裏に入れば、打ち水と老婆の警戒心、日の当たらない場所に咲き誇る朝顔
年季の入ったステッキさえ意味を成さなくなった老人と葬式業者は仲がいい
その昼の終わり頃、つまりは夕方の赤い炎で火照った街並みに、アスファルトやガソリンの雫やクラクションで満杯のテールライトの渦に、目をくらませながら半分はきかけた靴のまま歩いていく
ジャンプを繰り返し、歴史や土地や悲しみの断崖を飛び回り、一度は落ち着いた筈の精神をもう一度飛ばす為に砕くクリスタル、スプーンの上で沸騰する苦いチョコ
サンミリアは至上の慰め、崇拝、信仰の象徴、活力は活力を生み、明日を生きる為の糧となる
ああ
闇の訪れ、人工の光源、ざわめきの洪水、ネオンはあくまで鮮やかにきらめいて、売春宿やラブホテル、ジャパゆきや立ちんぼ達の懐に金をと祈ってる
閉ざされた空の無限光年向こうの一番星は寂しそうに、存在を誇示して孤児の立場から抜け出そうとしている
続く
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真昼の三日月は深みを欲しがった、清らかな水の流れをどぶ川に見いだした
空き缶や割れた瓶の破片で埋まる路上の悲しみや寂しさ
或いは豊かなホームレスでさえ抱く種類の絶望を、ある意味で唯一人間に許された救いとして
地球は今日も朝を終えたが、終えたのはおそらく我らが日本上空や文明だけの話で、経度が15度違えば、そこの朝もまた15度の違いで訪れ、それは昼も夜も同じ事
神は今頃、下僕に命じて質量の無い羽根と、身に覚えの無い罪を天秤にかけて、あの人は罪か、善良かを選別してるだろう
イギリスの北アイルランドでよく見かけた風景に厳格なパブリックの香りを嗅ぎ当てた
パブロック全盛の田舎町で繰り広げられたパーティーの、役所や学校やカトリックの教えなどは無関係で、無関心で、ダンスで感じて、反比例するように泣き声ばかりが地上を埋めて、イギリス上流階級への経済攻撃は身を潜めた代わりの無差別テロで家を破壊された老婆の涙は地球のアクセサリーだった
そんな時間も今では終わって、史上の暗い夜の日曜日が終わって、束の間の平安をあの国は手に入れたが、中東の戦禍に手を貸した現実は今も続いてる
フランスの核実験への紛糾は途絶えたが、ノースコリアの核と連動して、在日コリアンへの激しい痛みが、まったりとしたゆっくりな流れで血液として、民族的血液型を差別して、あらゆる侮辱の言葉を羅列して覚えた恍惚感は麻薬のになった
キラキラ輝く世界を汚され、薄められ、クズ呼ばわりされた子ども達は精神を冒され、人権の意味や解放や捕囚である事への恨みや、バビロンの手口を知識として取り込み、陰部を切り落とされた犬のように、尻尾を振り、媚びを売り、誇りも尽きて、信用できない安保理に正義を預けるようになった
続く
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アンダーグラウンドでも通用するクラシック、未来永劫残るであろうアカシックレコードの出来上がりだ
神に感謝したいところだが、それはメソポタミアやインダスの方へ意識がジャンプした瞬間に思いとどまった
インドのペテン師が最下層の民を神の子と名付け、彼らの汗の結晶をかすめ取り、一部のバラモンとクシャトリアに公共収益の貢ぎ物を捧げる今夜にも、神の子らは近付く冬の足音に怯え、税金徴収の官吏に媚びて、僅かの蓄えを数える指にはまる指輪は無く、生まれたての赤ん坊は親には愛されるが神からは愛されずうなだれる
ジャラジャラの宝石で身を飾った寺院の責任者は、愛すべき神の子らを拒絶しては稼ぎの安定への祈りとコネの繋ぎに時間を費やす
貧しいパンの売り買いで食いつなぐ親子家族の泥沼は変わらず、終わらず、昨日も今日も宿命の一部だった
脳細胞の分裂が収拾つかなくなった内出血の暴走でぬかるんだ精神の道を歩くんだ、俺って奴は
たぶん最も遠い所の絶望の足跡が見えたあの日から、光より先に暗闇の汚さに目を配るようになった
樹木の根の質感と時を重ねた人の肌の質感を比べたり、市街地に倒れた猫の死骸にたかる蠅や蛆の生命力を見つめたり、冷戦後も西側と東側の終わらない闘争や陽炎に想いを馳せたり、アフタヌーンのけだるさですべてを投げ出したり
そうだ
明け方に見た風景を考察してみた
それは高い高い雲までもう少しの距離にいた気球が墜落したのを見たのは脳内での話で、社会の現実はそれを認めないが、俺の記憶は現実だと認識している対比のズレの問題だ
価値観って奴が邪魔をするのは新たな覚醒への次の一手、禁じ手の開放とタブーの破壊だった
続く
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真昼の三日月は血に落ちたまま、鋭いナイフみたいに地球内部に突き刺さり、深みをえぐって大陸プレートを揺り動かし、地震や悲しみや死体の腐乱臭を撒き散らす手伝いをしたり、呼吸を止めないような言葉選びを繰り返す物書きのイマジネーションをすくい上げたりの暇なしだ
ステレオから鳴り透き通るオールディーズの音色で、俺の鼓膜と心音とα波が躍動する頃、遠くの中東アジアの国境線の兵隊達を想像した
彼らと俺との時間軸の違いを自覚した
イラクやその周辺で流された血液と油は、大統領の票には変わらなかったが、クルド民族の再生に一役買ったり、兵器輸出メジャーの懐を潤し、富裕層はスーツ姿の軍服でくつろぎ、タイの農村の家の数倍のハウスのベッドルームで靴を脱ぎ、ブロンドのブロンズ像と快楽を吸い尽くしてる
彼らの挫折は平和を生まないが圧力をも生まないと世界は信じているだろう
ドルが円を強くして、円がドルを強くする利害関係の一致で、全世界の二分の一の富や財産や土地や核や軍隊が動き回る
俺の生活にもそれは入り込み、受け売りの政治思想や知性無き地政学が絶えず耳に注ぎ込まれる
相反するように机に向かい、ノートに走り書き、ビートに飛び乗る言葉を綴り続ける
スプリングの飛び抜けたソファに腰掛け、携帯のメールをチェック、数人の友人と恋人からの誘いのメールを一瞥し、一度かみ砕いた後意識の外へ放り出せば外界との交信断絶に成功だ
灰にまみれたスウェットを洗濯機に放り込み、シャワーを浴びれば塩素と言語の科学反応
続く
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明け方、時計の一部から二時間が流れ消え去った
冷たい空白に肉と骨の音が響く
一億ほどの死の隊列が起き出し、こちらには見向きもせず、ただ一枚のパンとコーヒーを頬張って、急ぎ足で家から遠ざかって、自分勝手が許されない白岩の城に潜り込んでいくのを想像した
その二時間ほど前に降臨した朝日様
更に東では何時間も前に朝を麻の葉と迎えただろう
空は空で曇りを必要とせずに風と語りながら、体を持ち上げて太陽にスペースを許容する寛容さを示していた
自由を禁じた空間の圧力と一般的な倫理が、世界の始まりの暗示だ
昨日から引き続き、夜が逃げ出すまで俺はブルースに身を浸し、未来の尻尾を捕まえようとしたり、諦めて寝転がったり、注射針に注ぐ科学物質を探し回ったり、あい変わらず行方不明の夢を期待したり
偉大な思想と共に循環する歴史の輪は単純に人間の歴史で、俺はその中の脇役にもなれず、ジプシーや流民やリフュージーと同じく、ゴミの一人として扱われ、安い金で飼われ、そんな自分を嘲笑って、消費する魂は残り少ない
マンホールを掘り探る工事中の効率を計算してる人や、生ゴミと呼ばれる宝物を集めるトレジャーハンターは、差別と侮蔑と屈辱と恵みをと同時に受け取り、その日をその場しのぎの繰り返しで暮らしてる
穴だらけのアスファルトの上に零れたジュースに、生き残りの蟻は群がり、暗闇の巣に持ち帰って、おこぼれを喜んではまた旅に出るが次に帰ってこれるのは誰かを案じてる
その時俺は変わらず包丁を躍らせ、キャベツや牛肉を貪り腹にごちゃ混ぜ、金ぴかにギラリと輝きながら落ち行く太陽を見殺して、昨日の続きが始まるのを待ってる
続く
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その命は
何のために生まれた?
その手は
何を握っていたのだろう
その足は
どこに行く為に?
どこまでも高く
飛べると信じていた
手作りみたいな紙の翼で
あの遠い空までもと
たった一枚の壁が分厚い
小さな窓があるだけの
塞がれた孤児院のような一室で
わずかな光の繊維を見つめ
ずっと信じていた
泥で満たされた地上から
羽ばたく本能を奪われたはずの翼が
高く高く飛び立ちたいと
枯れた喉から
叫びにならない叫びを発し
壮絶に空を求めては
手作りみたいな紙の翼で
飛び立とうとしていた
生まれたばかりの頃は
閉じていた手の中には
一体なにを握っていたのだろう
それを知りたくて
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煤けた天井に薄い光
髭を蓄えたマスターは寡黙
几帳面に並べられたバックバーの酒は
おそらくは彼の生涯の財産
年代物のジュークボックスから
アーノルド・ケイモンズ
彼のサックスは涙の結晶のように
不安定な呼吸と深遠さを覗かせる
テーブルにはアイレイモルトを
注いだオールドファッション・グラス
隣にはよく見掛けるプッタネスカ
彼女の指輪は今日も眠らない
今夜分のクリスタルをポケットに忍ばせ
相手を選ぶ瞳は高級さを物語るが
ミモザを飲み干したその唇は泣いていた
赤いドレスの裾に落ちない泥の跡
それは彼女の生き様そのもの
穴の空いた俺の革靴とよく似ている
しかし交差する事はないだろう
永遠の平行線がここにある
少しばかりの会話もなければ
不必要な感情すらもない
ただ流れて消える時を
冷えたグラスの水滴に預け
沈黙の暗さを味わう