詩人:番犬 | [投票][編集] |
俺の彼女は六年前は癌だった
すぐに取り除いたらしいが
それでも癌には変わらず
そして先週に健康診断の結果
再検査という通知が来たと
11月27日の午前3時
電話の向こう
本人の口から
ついさっきにそれを聞いた
告げる決意の恐ろしさに
震える声に滲んだ涙が
痛々しく
重い空気で呼吸が苦しかった
混乱した頭に断片的な情報
子宮周辺の癌だとは理解したが
それがどれほどの深刻さかは分からない
何も分かっていないのかもしれない
彼女が背負った物の重さも
これからの足取りも
何も分かりはしないのかもしれない
かけたい言葉が見つからず
気持ちだけが激しく泣いている
正体不明の何かを憎み始めてる
病魔という奴はあくまで静かに
足音もたてずに
人の内部に
心の内部に
強靭な悪意を持って忍び込むものらしい
それは邪悪で残酷な力強さで
俺達を蹂躙しようとしている
抵抗する手段は
病院の医者や看護士にすがる事
祈れる物全てに祈る事
それ以外には何も無い
俺にできる事はなにもないんだ
誰を責めることなんてできやしないのに
何度も謝る彼女が悲しく
他の人を探してと言われても
戸惑うばかりの俺は一体何様なんだ