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番犬の部屋


[44] 告知
詩人:番犬 [投票][編集]



俺の彼女は六年前は癌だった

すぐに取り除いたらしいが

それでも癌には変わらず

そして先週に健康診断の結果

再検査という通知が来たと

11月27日の午前3時

電話の向こう

本人の口から

ついさっきにそれを聞いた

告げる決意の恐ろしさに

震える声に滲んだ涙が

痛々しく

重い空気で呼吸が苦しかった

混乱した頭に断片的な情報

子宮周辺の癌だとは理解したが

それがどれほどの深刻さかは分からない

何も分かっていないのかもしれない

彼女が背負った物の重さも

これからの足取りも

何も分かりはしないのかもしれない

かけたい言葉が見つからず

気持ちだけが激しく泣いている

正体不明の何かを憎み始めてる

病魔という奴はあくまで静かに

足音もたてずに

人の内部に

心の内部に

強靭な悪意を持って忍び込むものらしい

それは邪悪で残酷な力強さで

俺達を蹂躙しようとしている

抵抗する手段は

病院の医者や看護士にすがる事

祈れる物全てに祈る事

それ以外には何も無い

俺にできる事はなにもないんだ

誰を責めることなんてできやしないのに

何度も謝る彼女が悲しく

他の人を探してと言われても

戸惑うばかりの俺は一体何様なんだ

2006/11/27 (Mon)

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