詩人:秋庭 朔 | [投票][編集] |
温暖化が
進むにつれ
冷え症が求めた
温もりは
氷河期を懐かしむ
凍えた手で
雪を揉み解すと
指先にじんわり
生気が蘇える気がした
厳冬期に
固く締ったように見えた
結び目は
強く絡まった分だけ
容易に解けない代わりに
身動き出来ないくらい
ふたりを窮屈に縛った
雨期に入っても
からりと乾く大地に
亀裂が走る
たとえ降っても
涙腺はもう潤わない
移り変わる季節の中
記憶という船が遡る
水の無い川
いずれ忘却が
痕跡さえ蔽い隠して
最初から
無かったかのように
時は無情に流れ始める
瘡蓋が乾かぬうちに
繰り返しめくる
血が滲んで痛んでも
忘れたりしないように