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椿 みなと(元 華々)の部屋


[135] おばぁの家
詩人:椿 みなと(元 華々) [投票][得票][編集]

おばぁの家は
歩くとミシミシ音がする

どの部屋の戸も開けるのに
ちょっとしたコツがいる
トイレはおつりがくるやつだ

台所に行くと銀のタライが
いつも歌を歌っていて
居間の柱には父の成長と共に
私たち兄弟の成長の過程が
刻みこまれている

夏休みになると
おばぁの家に行くのが
楽しみで仕方なかった

夜になると
ちょっぴり怖かったけれど
その怖ささえも
純粋に楽しめた

寝る時になると
蚊帳を張るのが楽しみで
張っているときに
蚊帳網に飛び乗って
よく叱られたりした

どれもこれも
懐かしい思い出であり
大切な思い出である

そんな沢山の
思い出の詰まった
おばぁの家が ある夏の日
老巧が進んだ為 取り壊され
建て直す事になった

おばぁは毎日のように
部屋の壁や柱を撫で
名残惜しそうにしていた

取り壊される日
土埃りや
木屑を巻き上げながら
崩されて行くのを
皆で見守った

凄まじい音は
家の泣き声のように聞こえ
胸が苦しくなって
涙がボロボロと溢れた

今まで
おばぁや私たちを
見守ってくれてありがとう

沢山の思い出を作ってくれて
本当に本当にありがとう

長い間
本当にお疲れ様でした

最後に私たちは
家に向かって
深々と頭を下げた

父と私たちの成長が
刻みこまれた あの柱は
残してもらい

新しく建てられた
家の隣の納屋の一部になり
新しい家と共に
今も見守ってくれている



2009/11/29 (Sun)

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