詩人:リコ | [投票][編集] |
静かに静かに
越えていった
小さな
小さな
女の子の横を
女の子、
擦り切れたカセットの前で
膝付いて
夢中になって
一体何を聞いてたのだろう
小さな
小さな
男の子の
愛してい
る
よ
リピートして
途切れ途切れに
聞こえるけれど
女の子
その機械越しの悲痛
クッキーにして
食べていた
うそつき
うそつき
カセットに向かって
ぶつぶつ
ぶつぶつ
呟きながら
パクパク
パクパク
食べていた
僕は
うそじゃないよって
心の中で
呟いて
静かに静かに
女の子の横
越えていった
かなしみで
おなかはいっぱいに
ならないよ
にくしみで
おなかはいっぱいに
ならないよ
小さな
小さな
女の子
今では
愛でて花を
さすってる
そんな噂を聞いた
花は食べれないよって
振り返って
教えにいったら
ばかじゃないのって
笑われた
僕は
少し笑って
今度は
別れのウィンク
バイバイして
また
静かに静かに
歩き出した
ぐるぐる
ぐるぐる
円を描いて
また女の子に会う日まで
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内々にして
何回も何回も
折り畳んで
誰にも言っちゃ
だめよ
だめよ
絶対に
おさがりの
赤い靴
小さ過ぎて
私には
入らない事も
お芋の煮っ転がし
焦がしちゃった事も
昨日
たくさん泣いちゃった事も
全部
全部
ないしょだよ
私を焼きに来た
どんどんおじさんより
怖い人
怖い顔
さて
あの子は私自ら
噛んだのかな
それとも
勝手に
あの子が口の中に飛び込んで来たのかな
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駄目な事
全部し終わったら
最後の最後で
辿り着く
枝別れ道
二つの道に
二つの看板
イエス?
ノー?
僕に浴びせる言葉はどっち
まぁええやんけ
昔の事は忘れろや
阿呆な奴等が
ほざきよる
言われた訳じゃ
無いんだけども
多分そう言うだろう
そんな気がして
とりあえず
イエスに続く言葉に
悲しい歌は
無さそうだ
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水が
ぷちょんと
垂れる音
台所の蛇口から
一回だけ
3分間の水時計
何故か
5分かけて
流れる
音も立てずに
とくとくと
繋らない水と水
きっとこれは
何かの知らせ
僕の心の中
ビリジアン色した池に
ぷわんと広がる
絶えない波紋
赤い液体では無くて
透明に澄んだ飲み水が
ゆっくりゆっくり
垂れ落ちていく
目を瞑って
そんな空想を
水達から貰った
東京の水は
飲めたもんじゃないけれど
洗い流すには
打って付けだ
水時計
かなしばりみたいに
歪んだまま
止まっても
紫の液体の入ったガラス
割れてしまうまで
彼の名は水時計だから
―東京の水は
ひねるだけじゃ
飲めたもんじゃない
僕を
洗い流す
ためだけの
水
贅沢だけど
たっぷりと
使わせてもらうよ
ビリジアン色の池を
透明になるまで
薄めておくれ
その途方に暮れる様な
一滴一滴に
絶望などしないから
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日が暮れて
母さんの
いない
私の部屋
橙色に
私を包むよ
電気ストーブ
あまり
おまえに
近寄り過ぎれば
セーターが焼け焦げて
穴が開いてしまうけど
おまえの熱が
無かったなら
手足と心は
凍えひび割れ
震えてしまうよ
おまえの橙色が
無かったなら
この部屋は
天井に取り付けられた
小さな灯だけ
なんて暗くて
なんて寂しい
私が小さな子供の頃
母さんが好んでよく着ていた
オレンジ色の洋服
火傷を負うほど
くれた
穴が開くほど
くれた
母さんの熱の時代に
吸い込まれていくように
今も昔も
うとうと
うとうと
する私
私のお腹に
そっとかけてくれた
橙色のカーディガン
布に染み付いた
セブンスターの匂いが
電気ストーブの
蜃気楼に
漂い
香ってくるみたい
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豚を食べた箸を
スポンジで荒々しく
洗って
豚の鳴きまねしながら
音譜は分かりずらい
ぶつくさぶつくさ
文句を言って
豚の多い米国に憧れ
豚のイラストを
クールよね
なんて言いながら
豚みたいな奴だ
と
飛び交う言葉
耳を塞いで
真ん中を渡る
土の中にあるのは
ミミズくらい
トリュフも金も
出てきやしない
たっぷりと餌を貰い
養われた豚は
バラバラにされ
ばくばく喰われた
血まみれになって
肉を切り裂く方々に
塩は投げれ無い
かけられるべきは
ただ喰っている
消費者の私等だ
私なんかに
喰われた豚
人間と豚
せめて名前だけでも
交換してやれたらいい
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卵さん
バターさん
砂糖さん
生クリームさん
小麦粉さん
みんな
こん中集まって
みんなで
よいしょ
ぎっしりと
わたしは
ぶきっちょさんだから
あんまり
おいしく
あんまり
かわいく
できないけれど
こちこち
ぱさぱさ
あら失敗
けど
みんなで創った
共同作品
かちかち
へんてこ
まぁおかしい
けど
大好きな
母さん父さんに
焼いたのだもの
かちかち
こちこち
へんてこりん
あれれ
くすくす
笑いが止まらない
だって
母さん父さん
笑う顔
浮かぶのだもの
嬉しいのだもの
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おなかがね
空くと
わたし
食べたくなるのよ
おにぎり
一個め
何粒あるかしら
数える前に
食べてしまう
わたしは
食いしん坊かしら
おにぎり
2個め
数える事など
忘れてしまう
だって
しょっぱいさけ
たくさん出てきたから
おにぎり
3個め
もういらない
もう飽きた
わたしは
食いしん坊ね
わたしは
食いしん坊ね
わたしは
食いしん坊ね
ごめんなさい
おこめの神様
お母様
青いお星を
よごしたのは
わたしだよ
ごめんなさい
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水溜まり
駆け足もつれ
ズルッと
滑って
泥はねスカート
舌出すような
お茶目な素振り
乙女に系統
いや傾倒か
振り返れば
山積みの
花柄スカート
思い余って
破り裂く
観た事も聴いた事も
無い
映像と声
狂乱
塞いでも
塞いでも
毎晩毎晩
パーティーは
鳴りやまない
狂気を演じるのは
思いの外
簡単だった
百円ライター
ゆらゆら揺らいで
親指ばかりが
熱くなる
冷えきった部屋
これから燃やされる
千切れた可愛い布達は
私を笑う
明日から
裸
もしくは
ジャージで生きる
なんて覚悟も
出来やしないのに
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肉に施す
スパイス達
体裁様と世間様
塩気など
はなから無い事
気付いていた
だから
後生大事
これみよがし
シャブリ続ける気は
もう無いわ
鼻を抉るほど
ツンとした
絶望的なまでの
“世界の臭い”
味の無い肉に
施すスパイス
これだけあれば
十分過ぎるほどね
マゾヒストな肉の塊
叩かれれて
叩かれれて
染み渡る
野蛮なその味に
歓喜を震わす
あたしは
人で
人でありたい
他人様の
小さな黒目が
あたしを
大きく見ようと
小さく見ようと
つまらなすぎる
どうでもいい事
日本特有
整理現象
綺麗に片付けられた
魂なんて
その日から
呼び名は
魂では無くなるわ
番号さえ
あれば十分
あたしは
番号にはなりたくない
あたしは
いつだって
いつだって
がんじがらめの
島国で
崇高なまでに
阿呆な方へ
いいえ
人として
生きていく
息絶えるまで
染みても染みても
満足しない
完成しない
あたしは
味の無い
ただの肉で
あり続けたい