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リコの部屋  〜 投稿順表示 〜


[44] 煎餅と昔の恋
詩人:リコ [投票][編集]

虚無を噛み砕く様に
揚げ煎餅を
バリっと一つ



砕けた甘辛い粒が
上の歯へ
下の歯へ
それぞれ
張り付き



口を開けば
ハイサヨナラ


口を閉じれば
ハイコンニチワ



脂っこい粒と粒
ガチガチガチガチ



おまえとあたしみたいだな






とっさに
浮んできたんだ
今日は特に
灰色だったから
全てをおまえのせいにする
絶好の日和だった




こんな具合の
こんな感じ
頼りない
記号達が
ひゅんひゅん
ひゅんひゅん
戯れ合って



普遍とは真逆の
とてつも無く
人間らしい
この崩れやすい
感情の記号化供を




言葉に返してやる方法を知る事が出来るのは


学ですか
その場所は
エゴですか
その心は




いや
もう何も言うまいよ
あたしは粒だ
甘辛い
小さな粒だ




虫歯に詰まった
甘辛い石



これは
おまえだろうか

あたしだろうか




それとも
ただの
煎餅のカケラだろうか



2006/03/07 (Tue)

[45] 夜夜ナルシズム
詩人:リコ [投票][編集]

よくある話
よくある話
この枠の中
突っ込んじまえば
怖い話も
よくある話



くだらないのは
あんたじゃ無くて
背中に取り付けられた
目玉達だ
過去巡礼
ギョロギョロ
ギョロギョロ
何になる



生きていくのに
時間をかけず
何をかける


消していくのに
時間をかけずに
何を



憎しみを
せこせこせこせこ
かけ算し続けると
言うのかい



目を瞑ったら
そりゃ
画面は黒いだろう



あんたは人間だ
モグラじゃ無い



あんたは人間だ
モグラじゃ無い



あんたは人間だ
モグラ…




自室で
吹き込んだ
カセットテープ
羞恥にかられ
ブチっと止める




from自分
断言教祖めいた
スピーチ
to 自分



救われたくて
ただ救われたくて




アホか

一人突っ込み
かましてみて
自嘲の果てに



泣き疲れて
ねんねする




モグったふとん
瞑った視界が
黒くても
怖くは無いのは



カセットの中の
変な女のおかげなのかしら



2006/03/07 (Tue)

[47] インパルス
詩人:リコ [投票][編集]

20%ほどしか
使われて無い


しわの少ない白い紙

隣人から頂いた
ドス黒いインク
簡単に
簡単に
流れ落ち

『もう
色を施す場所も無い』

捉えた20%に
全てを垣間見る


それは
あまりに
小さ過ぎる
認識だった





狭い世間に
広い世界を
潰されて




抵抗せず
塗られた

無力感


手のひらいっぱい
受け止めて




物々は
捨てても捨てても
溢れ返り

大切な心根は
奥底に
沈められていった


腕の中には
相変わらず
うごめく
得体の知れない
不信の色々




借り物の
表現は恥知らず
けどニヤリ顔
何度も重ねられた油絵

絶望的なまでの灰色



可能な限り
僕等は汚れていこうとする



世間が送る
八風(評判)は
僕等の顔色
自在に操り


皆々は
そう
出来るだけ
灰色に




赤過ぎても
黒過ぎても
白過ぎても



いけないのさ


ってね




出る杭は
打たれるどころか
根こそぎ抜かれる
皆様はもう
お気付きのようで




頂く物々を
対象とした満足は
限界と言う夢オチで




白い紙は
塗り過ぎたなら
最後は狂気色
ちんぷんかんぷんに
なっちまう



まぁそれも良し


と言っても
僕は気が狂うなんて
ごめんなんだ




灰色に変色した
白であったはずの紙

精一杯
立ちすくんだ後




手足は既に
シンプルなインパルス以外で
動くはずも無い




溢れかえった物々に
うなり声も
溜め息も
悲痛も
もういらない
消せばいい





僕は
灰色に染まった
白かった紙に
キスをし





ビリリと破く
事にしたんだ





それは
僕にとって
生まれてから
一番最初の表現
と言ってもいい



「破いちゃえよ」

手足は確かに
そう言った




2006/03/11 (Sat)

[48] テントウ虫
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這っている
土よりも


少しばかり薄い色した
枝の様な生き物が



突如目の前に
現れて




怖くて怖くて
たまらなかった



僕が
カマキリの奴に
喰われそうになった日

もうだめなのかと
思ったんだけど


風がビュウって
吹いたから
あの日は
薄い羽を広げて
逃げ切れた




けど
今回ばかりは
そうもいかないかもしれない



どんなに逃げても
追ってくるし




僕の目の前を
塞ごうとする



ああもう
イチョウの木の
じいさまに
これから
会いにいかなきゃ
いけないのに




どいてよ
どいてったら



宙を動き回る
あぶなかっしい枝になんて
停まっていたくないよ

ねぇ
キミはどんな
生物なんだい?
僕を食べる気も
無いみたいだし



キミは
よっぽど暇らしいね




早くしなきゃ
僕には時間が無いと言うのに



あっ
いまだ

もう僕飛ぶからね
ばいばい!








僕は人間

いつか
木々や花として
生まれ変われたなら


対等に
あなたと
戯れ合える日が
来るのかな



少し大きく見える
あなたが
手足を広げて


小さな花になった
僕の肌に張り付くのを
空想したら



怯えてしまった


こんな僕は
やっぱり人間だ





笑ってくれよ
テントウ虫



今まさに
燃え生くあなたに
また会いたい

2006/03/11 (Sat)

[49] 友達
詩人:リコ [投票][編集]


ほら
ふっと
空気が変わった
気がしたよ




苦虫噛み潰した
僕の顔


ほわっと
ほわっと
解けていく
透けていく




ほら
そうだ
間違い無い




視界濁らせた民族

呪う僕
遥か昔から
くるくると



それが今
ようやく
風と共に飛んでいく

ああそうか


変わったのは
酸素じゃ無くて
僕の中の小さな小さな喉元だ



地球が生まれる前から
僕は
空気と友達だったんだ


彼は時間を連れてきた

僕の命を
何億光年もかけて
洗うために




彼は
笛になって


僕の喉の中に
入って来た



呼吸の仕方
教えてくれるらしい



震えなさい
命の灰汁を
すくいなさい




僕は言われるがままに


空気を震動させ



唄う事にした




らんららら

らんららら



独りぼっち



らんららら




網目になって
繋がっていく




2006/03/13 (Mon)

[50] ギャー
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羊水にまみれて
初めての酸素
苦しいよと
泣いた日から



「思ったよりキツイ此所」


そう思ったはずなんだ
けど選んだのは
俺だから



物心ついた時から
想像しか出来なかった
インドの町並み
転がる物は人
教えられただけの悲惨
それよりも
距離の取り方を
教えてくれよ


文献が噛み付いて
俺の身体を離さない

やだやだやだ

狂いそうに
泣きわめいて
発狂寸前
手一杯に



その地の
空気を臭いを土を
感じ
まざまざと
凝視
そして
そこで闘う事
俺には出来ない


逃げ出した



JAIKAに背を向け
情けない
嘘つきだ
最悪だな
どうすれば




けど
孤独と世界への
リンク
選んだのも
また俺



描かねば
弾かねば
唄わねば

捲し立てられ
突き動かされる



何のため?
さぁ




金の為なら
てっとり早く
あのエスカレーターに
乗ってたな



名誉のためなら
あのまま
温い舞台に浸り
ちやほやちやほや
され続けてたな



捨てた事による虚無感も
長続きしなさそうだ


なぁ俺よ
何がしたいんだ
何が欲しいんだ



あるはずも無い声
聞こえる
躁だからか

「闘う事以外に
安息は無い」





開いた子宮から
開いた眼
開いた世界
眼閉じたくなるリアル


「キツイな此所」



わかってたんだ
母体に
痛みを与えてまで
生まれたかった



わかってたんだ



わかってたんだ




2006/03/13 (Mon)

[51] 
詩人:リコ [投票][編集]

痺れ切らした二十代の
女体に盛るは
魚の肉では無く


誤魔化しの無い
テレキャスの生音
千切れそうな歌



丑虎の時間
寝室は
耳だけの虚像の平和

一本の橋となり
電流が脳内を行き来する



室温に溶けたあたし
女々しく
抱いてもらうの拒み


男のフリして
あの子を襲う


下は濡れずに
滝の様な脂汗
震えは
止まらず
歯がカチカチと
リズムを刻む




冷蔵庫から
薄切りレモン
取り出しかじり


嗚咽を調え




漂う不確かさに
ロックをはめる


圧力に潰され
はみ出た女々しさは
百円ライターで
燃やされた




酔いどれ役も
聖者の行進も



もはやあたしには
出来そうに無い



掲げたピースに
世間が冷笑
女を削る
男を造る



泳ぎ続けねば
死んでしまう



あたしと鮫は
よく似てる



深海は異形の群れ
海上は漁師が待ちわび

鳥肌は常時
だけれど



底へ底へ
あたしの庭へ


上へ上へ
あたしの戦場へ





五感と音を頼り
冷たく透明な母と共に



生まれ落ちたは
水の中




止どまる安息の地など



そもそも
最初から
無かったのだから





2006/03/15 (Wed)

[52] 7
詩人:リコ [投票][編集]

転げ落ちたジャガ芋



小さな歯形をつけて
影を落とす



夕映えが
正しい眼の使い方
諭し
笑いながら
こう言った様な気がした



「聖書を読んだ事、無かったのかい」






冷たい壁
号令以外の音に
耳をすます様に
パチンパチン
指鳴らす


濁った眼を持つ
悪魔と言われた

7ドル盗んだ少年
鉄格子の奥
もう何十年も
少年のまま
ずっと
ずっと



神様はきっと



マメだらけの手に
キスなんて
してくれやしなかったから



枯れた井戸水に
魔法なんて
かけてくれやしなかったから



明日も太陽が
きちんと顔を出す様に
熱がひく様に

雨が降る様に

祈りを捧げる



神様は
そのおいぼれの
あの少女の
手と手を合わせた
隙間に居るのかも
しれない




言葉巧みに
雰囲気をかもしだす

70gの小麦粉に
眼もくれなかった僕


閉じた本を
膝に乗せ


合わせた手と手
出来た隙間にそっと
眼をやる





散らかった日常が

ただただ
小さく夢の様に



揺らいで
見えるのは






2006/03/19 (Sun)

[53] 
詩人:リコ [投票][編集]

拳でグシャリ
透明紙コップ
飛び出す炭酸水
ぽとぽと
しゅわしゅわ



滴るサイダー水
思いの外妖艶だ
僕は思わず
虫歯にやられた奥歯
舌先で舐め確かめた




びしょ濡れになった
この手の趣は
いつだって
エキセントリック
いい加減過ぎて





僕は人間だと言うのに
頭を使うのが
どうやら下手らしい






空っぽ紙コップ
携えた
あの子は
傷も無いのに
包帯巻いて
僕だけが
その下に隠された
言い知れない寂しさに
気付いてた



なんて
ちょっと
傲慢かい?




あの子がわざと
大勢の前
指で弾いた
空っぽコップ


水が零れたふりした事も
それに同調する
黒い影の群れも




僕は目をこすって
何が起きてるか
何度も何度も
確かめたんだけど




どうしても
わからない
だから


この手の趣くまま



サイダー水の入った
僕の紙コップ
グシャリと
潰して見せたんだ



中身が溢れるって事



見せたかった




そしたら
あの子は
たちまち
僕が零した
炭酸水の泡になって




木材テーブルの隙間に染み込み
消えてしまった







なーんだ、
そっか。





2006/03/23 (Thu)

[54] 語る木と君
詩人:リコ [投票][編集]

雨など染みない


そんな身体が
欲しい訳じゃ無い



切り裂かれる事などない


そんな心が
欲しい訳じゃ無い





あの木は
たやすく
冬を受け入れる

あっけなく
緑葉に去られる



その情けない身体
余す事無く

一人の人間に見せつけた




恐怖に似た
エネルギー


震え出す僕

蟻より小さな身体になって







削れたピック達共に
歌っては泣いてを


日々として
未来として
重ねていったあの頃




使い古しの切れた弦

マーシャルから
垂れ下がる
シールド


いっそ
首に巻き付けてしまえば

そんな


ちゃちな夜を
安い紫絵の具で
塗り替えて



殻へ殻へ
無音の眠りの世界へと
自分をさらっていったんだ



恐らく舐めたら
酸っぱいのだろう
僕の脳味噌



偏る思考に



お手上げだった



裸になったあの木に
名前をつける勇気も無い


ああ
もう枯れてしまったのだ



そう呟くしか
出来ずにいたんだ





けど
君と言う奴は


あの木にうっとりとした
視線を注ぎ



涙を浮かべながら
こう言った






「なんて立派な木なんだろう」






その時
君の一言で




目の前の枯れ木に
若々しい緑葉が
突然生い茂ったんだ




けど二度の瞬きで

木は元の枯れた姿に


戻っていた





そしてもう一つ
君の一言で
僕は蟻では無く
君と同じくらいの
背丈に
人間に
戻っていた





「やってごらんよ」





かかとを上げて
少し背伸びした僕に




木と君が
語りかけてきて






2006/03/25 (Sat)
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