詩人:冥 | [投票][編集] |
「僕は嘘で出来ている」
そう言って、
涙を溢す君
震える体
君が嘘って言うなら、
その涙も嘘なのだろうか
波打つ心臓は嘘なのだろうか
「君は嘘じゃないよ」
ほら、こんなに温かいのに
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コンクリートに点を描く
ぽつり、ぽつり
予報外れの雨
水玉模様だ、とコンクリートを指差す間
あっというまに、コンクリートを色濃く染めた
水玉模様は見えなくなって、
僕は走って、雨粒から逃げる
ばしゃり、ばしゃり
あぁなんだ、そこにもあった
水溜まりに落ちる雨粒が描く、水玉模様
「綺麗だね」
僕は足を止めてしまった
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皆に聞かれた、ある言葉
誰にも聞かれなかった、ある言葉
どれも同じ言葉であるべきなのに、優劣決めて背比べ
賛美の数で決めつけて、少なければ忘れてしまう
否定され、天秤から溢れた言葉は、
音もなく、
落ちていった
どうか嫌いにならないで
貴方から生まれたその言葉
どうか覚えていて
貴方が紡いだ一つ一つの、その言葉を
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朝日から溢れた色
空と光が溶けて、輝く雫
淡く、染み渡るようなそれは、
空気の中に降って、寝ぼけ眼にゆらゆら揺れる
窓越しのその世界
切り取られた高尚な絵画のような世界は、
一際輝く光を帯びて、
一瞬の風景になって、
何事もなかったかのように、現実を映し出す
あぁ、二度と出逢えはしないだろう
それは刹那の夢
けれど瞳は覚えていて
朝日が作り出したその世界を
空と光が溶ける、一瞬の時を
心が光で溢れるように
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「ごめんなさい」
貴方は世界にそう呟くけれど
具体的な悪という理由がないそれは何の、解決にもならない
「貴方は悪くないよ」
いじめっ子に謝って、
冷たい親に謝って、
弾き出された世間に謝って、
それは謝りではなく、誤りだ
貴方は呼吸をしてもいい
好きな言葉を使ったっていい
貴方から溢れたものは、いつか涙や笑顔になる
誰かの感情になれる筈の貴方は、
無価値なんかじゃない
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口、耳、目、どれかがなくなってしまうのなら、どれを選ぶ?
僕がふと聞いたその質問に、君はうーんと考えたあと、困ったように口を動かした
「口は、困るな、君と話せなくなってしまう」
「耳も、困るな、君の声が聞けなくなってしまう」
「目も、困るな、君を見れなくなってしまう」
それじゃ答えになってないよ、と言うと、君は言う
「じゃあ、全部なくなってもいいよ」
どうして、そう言った私の手をぎゅっと握って、君は笑った
「君と話せなくても、声が聞こえなくても、姿が見れなくても、こうすれば君の感情が心に浮かぶもの」
さっきと言ってることが違うよ、なんて言葉は、夕焼けに照らされた君の笑顔に呑み込まれて、
僕はただ、ぎゅっと手を握り返した