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冥の部屋


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口、耳、目、どれかがなくなってしまうのなら、どれを選ぶ?



僕がふと聞いたその質問に、君はうーんと考えたあと、困ったように口を動かした

「口は、困るな、君と話せなくなってしまう」

「耳も、困るな、君の声が聞けなくなってしまう」

「目も、困るな、君を見れなくなってしまう」

それじゃ答えになってないよ、と言うと、君は言う



「じゃあ、全部なくなってもいいよ」



どうして、そう言った私の手をぎゅっと握って、君は笑った

「君と話せなくても、声が聞こえなくても、姿が見れなくても、こうすれば君の感情が心に浮かぶもの」

さっきと言ってることが違うよ、なんて言葉は、夕焼けに照らされた君の笑顔に呑み込まれて、

僕はただ、ぎゅっと手を握り返した


2012/06/21 (Thu)

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