詩人:アロー | [投票][編集] |
それは見るほどに滑稽な姿だったのです
僕は笑わずにはいられなかったもので声をあげて笑ったものです
もちろん周りも皆が声をあげて笑っておりました
ええそうですとも
笑ったのは私ひとりではなかったものですから
私は少したりとも悪いなどとは思いませんでした
だから今も悪いとは思っておりません
なぜ私が責められなければならないのでしょうか
あなたに何の権利があるというのでしょうか
どうか私のした事をあれこれ問い質すのはやめてください
あなたが思う事を私に押し付けるのはやめてください
あなたが思う事はあなただけでやってゆけばいいではないですか
私は皆と同じならそれでかまいません
皆が私と同じならそれでかまわないのですから…
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無垢なるは我にあらず
清貧なるは我にあらず
氷面鏡に映りし真実の
知るが故なる苦しみか
知らぬが故の罪無きか
いづれも逃れぬ宿命と
やがても知るは己の姿
故に望みて罪人となり
知るが故なる道こそを
歩みて眺むる氷面鏡に
無垢なる我の姿映りし
清貧なる我の姿映りし
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それは月明かりが闇間を照らすように
あなたはどうか私の行く道を照らして欲しいのです
いつも孤独に夜を渡ってゆく方が
今夜は何故だか寂しげに映って見えます
僕は大人になって夜空を見上げるようになりました
あなたが答をくれそうな気がして…
だからもう少し見上げていましょう
それは晩秋の候
寒い神無月の夜に…
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澄み渡りし湖面に浮かぶは小舟の波紋
霞立つ宵明けには岸辺に佇む少女の影
静みて鎮まる寂しげな風景など描かず
決して描かずに彼は待ち続けると言う
決して描く事なく少女を見守ると言う
想い彷徨う事なく留まる心は空見上げ
けれど目を閉じ黙想する老人が言った
「色褪せた花飾りの本当の色を知っているのは私だけ。
鮮やかなその色の思い出を心の奥に見つけられるから。
寂しいけれど。
寂しいけれど…」
澄み渡りし湖面に浮かぶは小舟の波紋
霞立つ宵明けには岸辺に佇む老人の姿
今はただ思い出と生きる老人が…
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終末は霧の立ち込むるように来た
見えざる風(かざ)の鳴き声を寝耳に伺えば遠雷は予感と気付かぬまま過ごしゆく
終末は雪の降り積むるように経つ
衆民は蓄えし力をば試さんとばかりに四方に散り八方に集いて血水の経路を築く
終末は雨の降り止むるように往く
刻まぬのではなく刻めぬ歴史に価値はなく都市は墓標となり果てり
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心の記憶は確かですか?
キミ、僕は多くのものを失いました。
見えているものが心と繋がらないのはとても寂しいものだけれど、夕日差し込むあの廊下に佇むことはもう二度と叶わないのですね、キミ。
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なめらかに描かれたシンボルには、それを描いた者の憂鬱が込められている。
ポジティブな意志ではない。
むしろ排他的とも言える思惑の所業である。
自己のみを中心とした世界の構築を求め、「尊きは我唯独りなり」と心奥に潜む真実が表層へと現れる。
その現実を知るからこそ憂鬱なのである。
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我は言葉を刻みし者。
心虚ろなれども言葉をば刻む。
其が言葉の我が深き処を昂ぶらせり、
其が昂奮の我が望むる処を失わせり、
其が失望の我が見つむる処を与えり、
其が見識の我が進むる道を示せり。
「さあ、濁りて吐き出す音色の中に、当に導きを生業とする台詞を、熱き黄金で白銀の書に青銅の筆持ち刻みつけよ」
刻みし台詞に価値など要らぬ。
語りし言葉に真理をば求めん。
我は言葉を刻みし者。
心虚ろなれども言葉をば刻む。
今も見遥かす未だ来ぬ時の中にて…。
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静かなる夜に眠りしは健やかなるかな
されど寂しき者は何処よりか現れ来る
月の天頂にさしかかる頃より現れ来る
求むるは魂を揺さぶらんとする彷徨か
否、求むるは魂を鎮めんとする探求か
やがて得られんと願いて至る狭間にて
今宵もまた静けき夜と共に過ごさん…