ありがとう、という言葉に、

ありがとう、で返した。


なんだか心が満たされて。

なんだか嬉しくて。


もう一度、ありがとう。

帰っておいで。

ほら、お腹すいたでしょ？

お外は寒いでしょ？


帰っておいで。

ほら、泣かないで。

頑張ったね。


帰っておいで。

ほら、ここがあなたの居場所。

あなたが帰る場所。


帰っておいで。

帰っておいで。

彼女はいつもうたってる。


哀しい歌を、笑いながら。

明るい歌を、泣きながら。



彼女はいつもうたってる。


哀しい顔で、笑いながら。

嬉しい顔で、泣きながら。



彼女はいつもうたってる。

いつも彼女はうたってる。

夕方。

おれんじの灯りが灯る家々。



その色があったかくて、

優しくて、切なくて。




何となく、懐かしい気がして。



視界がぼやける。





私が好きで嫌いなオレンジは、

今日もどこかの家庭を包んでいるんだろう。



どうかその灯りが、消えないように。




夕方。

おれんじの灯りが灯る家々に、


祈りを込めて。



いつまでもその色を

絶やさないで、と。



心からの祈りを込めて。

くだらないプライドを捨ててかないと、


自分が押しつぶされそうで。



プライドを捨てるのもまた、


プライドなんじゃないかな。

薬を飲むたび考える。


これ飲んだら、治る？



答えなんて、

自分が一番知ってるのに。

自分と向き合おうとする度に、

自分を見失う。

将来はあやふやなままで。

未来予想図を描こうとすると、

まるで遺言を書いてるかのようで。

流れ、というものに身を委ねるのも

ひとつの選択肢なのではないかと。

そう、思うのです。

誰が悪いんやない。

誰も悪ない。

私はそう思っとうよ。

いつか

父さんも 母さんも

自分も

全部 ぜんぶ

許せたらえぇなって。

そう思っとるんよ。

流れた血が、紅かった。

流れた血が、温かかった。

流れた血が、私をつたった。


私は、

私は、今日も生きていた。

過去があるから

現在(いま)がある。


分かってても、

消したい過去があるんだよ。