詩人:矢井 結緒 | [投票][編集] |
放課後の教室
暮れ泥む夕陽。
まだ帰りたくない、
この校舎のどこかに
君がいるから。
一番近くにいたこと
気付き始めてた。
2時間目の数学
君に借りた教科書。
まだ返したくない、
この細やかな糸で
繋がってたいから。
みんなに知られて
冷やかされてた。
卒業式のあと
黄昏迫る夕空
まだ終わりたくない、
あの校門を抜ければ
それぞれの道。
変わってしまうこと
だだ怖れてた。
成人式のあと
故郷の居酒屋。
もう取り戻せない、
遠く離れた場所で
別々に流れた時間。
大人になるということ
受け入れ始めた。
大学出て2年
披露宴のテーブル。
もう振り返らない、
遠ざかる背中
知らない人の腕の中。
さよなら告げること
上手じゃなかった。
自転車でふたり
いつも帰った川辺。
まだ聞こえない、
放課後の校庭
遠く響く下校の音楽。
忘れられないこと
胸に閉まったまま。
終わりのない放課後。