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望月 ゆきの部屋  〜 投稿順表示 〜


[215] かお・かお・かお
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顔に
魅かれました


あなたの顔。


あなたは
二つも 三つも
三つも 四つも
もしかすると
四つも 五つも
顔を持っている

そんなところに。


わたしと おんなじで。

2004/06/03 (Thu)

[216] 雨上がり
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ふりむくと きみは
ひどく仏頂面で

左右のほっぺたに
大福をひとつずつ 
ぎゅうぎゅうと
おしこんでいた


空にはみかんが浮かび
足元にはコーラの水溜り
シャツには飴玉


なにもかもがおいしそうで
ひとつのことだけ
考えてなんて
いられなくなった



それだけ

2004/06/03 (Thu)

[217] ぺら
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すきま風に押され
宙を舞い
手のひらにのっかる

こっちが裏だ。
こっちが表だ。
裏だ
表だ。
裏、表、裏、表、裏

小競り合い


するりと指の間をぬけて
いらついたように
3回転した

くしゃくしゃと丸まって
ごみ箱

こちらに目をむけ
ニヤリと笑った


緑のうすっぺら。



2004/06/05 (Sat)

[218] ナミダの海
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もうずっと
その海に
肩までつかっている。

初夏の陽射しが溶け出し
揺れる波の
浅葱色

ここちよさに
もう このままでもかまわない、と
錯覚するほど。

雨が振り出しても
揺るぐことなく
肩までつかったままで

やがては
髪も肌も
溶け入る。
それを待っているのかもしれない

頬ではじける波しぶきの
冷たさが
ナミダ

目が覚めたら
こにはいられない

遠くの島まで泳いで
広葉樹の下で
雨宿りしよう。

揺さぶるのは 波

やがて
枯れる 海




涸れる ナミダ

2004/07/31 (Sat)

[219] 受け皿
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手のひらにお願い。
こぼれても気にしないで
いい


地球をまるごと
受け皿に するから

したから


ぼくの手のひらの
無数の溝をつたって


あふれるほどのきみを




あふれるほどに。

2004/06/08 (Tue)

[220] 風来坊
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今から
向かいます。


彼方からの発信を受けて
待ちきれずに
窓枠から
片目をのぞかせる

目の中に飛び込んできたのは
方向音痴の雨粒だけだった


そういえば
ここまでの道順を
説明しなかったな、
とか。


渋滞してなきゃいいけど。


温度計と
湿度計の
目盛りは たぶん


ぜんぶ わかってるんだ。

2004/06/08 (Tue)

[221] 六月
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ずっと、昔。

雨降りが続くと 
どこの家も
軒下に テルテル坊主が
ぶらさがっていた
あの頃。


昇降口から振り返った校庭は
ところどころに
コーヒー牛乳の水溜りで
少しだけ おいしそう

上履きの裏底が
なぜだか濡れて
足跡のついた階段を
一歩ずつ 踏みしめる

号令がかかって
着席すると
黒板の前の女の先生は
うねった前髪をこっそり直したりする


雨の日の休み時間は
色とりどりの輪っかをくっつけたものを
宙に放ってはつかみ
つかんでは放って 
遊んだ。

やがて
その色とりどりの輪っかの遊びは
学校で禁止になったけれど
なぜ禁止になったのか
今となっては 思い出せない


雨の日の学校は
図書室からインクの匂いがこぼれて
満ち満ちている
教室は
シャープペンシルの芯の匂いが
それに混じっていた


雨の日のぼくらは
髪も 肌も
なにもかもが
湿気ていて

ちょっとしたことで
泣いたり
鼻をかんだり
したので

ポケットの中、
いつもはあまり出番のない
折りたたまれたちり紙が
大活躍していた。

2004/06/08 (Tue)

[222] 水溜まり
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しゃがみこんでいたら
かたつむりが横切ったので
雨はどうして降るの?
と、問いかけてみた。

かたつむりは
にょきにょきとツノを出しただけで
何も言わずに
つるりと通り過ぎた。
目玉だったかもしれない


穴を掘っていたら
ミミズが落っこちてきたので
地球の真ん中には何があるの?
と、問いかけてみた。

ミミズは
ずぶずぶと顔を穴に突っ込み
奥へ奥へと潜ってしまった。
お尻だったかもしれない


悲しいとき泣いたり
嬉しいとき笑ったりするのは
なぜ?
と、問いかけてみた。

あいにく
目も口ももちあわせてないから
泣いたり笑ったりなんて
しないんでね。

と、アメーバは鼻を鳴らして
答えた。

2004/06/10 (Thu)

[223] スペクトル
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階段の途中、
上から5段目あたりに
背筋をのばして座っていると
傘を忘れてしまったことなど
どうでもいい
と、いった気分だった


昨日洗ったスニーカーは
乾いただろうか


遠くの空にかかる虹は
音符のかわりに
くしゃみを1つ
投げてよこした


ついでに 
深呼吸。





さいごは、ジャンプ。

2004/06/10 (Thu)

[224] 地下室症候群
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四方の壁に
お気に入りのタペストリーを
隙間なく 
貼っつけて

自由と
孤独は
いつでも紙一重だ。
などと つぶやいている

地下室では
いつも
ひとりぼっちだ

薄い天井の向こうに
誰かがいることを
わたしは
知っている
少なくとも ひとりは。

窓こそないが
なぜだかわたしは
外に広がる景色を
知っていて
今日は晴れている。

地下室では
ひとり
パスタをすする

くるくる と
まわしたフォークの手元が狂い
床にとりこぼす

地下室と
薄い天井の向こうで
カシャン、と
同時に反響し


タペストリーは
こっそり震えていた。

2004/06/12 (Sat)
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