春を待っていた電信柱の脇にタンポポが顔を出して庭のハナミズキの枝先に小さな葉が芽吹き桜が 今何分咲きだとかって世間が騒がしくなったりそれでも まだ春を待っていたあなたがそれを連れてきた小高い丘の上から腕を伸ばしたままごろんごろんと愉快に転げながらわたしのもとにたどり着いたあなたの体のあちこちに春のカケラがくっついていたそれは 恋かそれは 涙かあるいは ただの切れ草かもしれないただ たしかなことはあなたが春を連れてきた
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