詩人:望月 ゆき | [投票][編集] |
坂道の途中に
わたしの家はある
彼はいつも 遊びに来ては
夕方になると
その坂道をのぼって 帰っていった
坂のてっぺんには
いつも夕陽が丸くオレンジに発光していて
手を振る彼は
夕陽を背にした
影絵でしかなかった
影絵だったせいで
彼の表情の変化に
わたしは気づけなかった
あるいは気づかないようにしていた
その日
夕陽はいつもより光を増していた
おそらく
いつものように影絵の彼は
いつものように坂道をのぼっていき
夕陽の中に飲み込まれて
そのまま
消えてしまった
彼は消えたきりだが
夕陽は今も 発光を続けている
わたしは
影絵の彼の 最後の顔が
知りたくてたまらないでいる