詩人:望月 ゆき | [投票][編集] |
眼下に広がる海では
白波が立ち
うさぎのごとく 跳ねている
岩を打った波のしぶきが
わたしのところまでとどき
涙のごとく 頬をつたう
それが波だ、と言い張るわたしを
それは涙、だろうとうさぎは笑う
この場所を
立ち去る理由を探して
すべもないわたしは
抱えていた想いを
粉々に砕いて
海にばらまいた
風が それを運んでいく
波が それを飲み込んでいく
うさぎは それをつかまえて遊ぶ
遠くには 島がかすむ
そこでも誰かがこうして
今まさに 海になにかを捨てている
かもしれない
ああ それでは
うさぎたちは 落ち着かないであろうな
と
少し軽くなったわたしは
思わず くすっと笑い
そこを立ち去った