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望月 ゆきの部屋


[264] 送り火ピアニシモ
詩人:望月 ゆき [投票][編集]

いつからか部屋は
水槽、で
ガラス越しに燃えている
赤、また、赤
近寄るとそれは窓で、
背伸びしたそのとき
窓枠は壊れ
緑色、流れて、
流れて、

緑色をのぞきこむもの
も、また、緑色
打上花火の終わりにも、似て
通り過ぎる東風は
水鏡に映さず
ただ、叩いてゆく
弱く、叩いて、
極めて、
弱く、叩いて、
もっと、もっと、

箱は揺れる
赤、また、赤
入れたものは、わたし
箱の外側に刻む、
コトバ、
コトバ、を探して、
水の上をすべる
水面を揺らす、手、
とうめいな、手、
極めて、
弱く、弱く、

コトバはいつも
後ろに流れて、逝く
聞き返す、
聞き返す、
こたえても、もう遅い
過ぎ去ってしまった時間

流れてゆく、赤、
還らない、
還らない、
窓枠の、内側


2004/08/15 (Sun)

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