詩人:望月 ゆき | [投票][編集] |
宵闇、
五線譜の電線、で
輪郭のぼやけた影だけの鳥たちが奏でるのは
誰かの
失くしてしまった、声
あるいは、足音
にも、似て
道しるべ、にするには
あまりにも不確かな
風通しのよくなった
右側、をさぐると
そこには、
今も、なお
世界地図、は広がっていて
黒装束の夜に手をのばすと
在るはずのない、
見えないそれ、に触れてしまう
あなたの頬、に ひまわりの丘
あなたの鼻すじ、に ロッキー山脈
あなたの右耳のうしろ、に カシオペア座
あなたの口元、に ニュージーランド
あなたの髪、に サンゴ礁のリーフ
あなたのつむじ、に ペンギンが
あなたのひざ小僧、に スフィンクス
あなたの足の中指、に セーヌ川
あなたの爪、に 赤いブランコ
あなたの背中、に あの日の、海
あなたの心、に わたし、
あなたの心、には わたし、
ではない、誰か
ほかの、誰か
ひととおり
世界を旅しては、還る
くりかえし、
くりかえし、
暗闇で、目が覚める
たしかなこと、といえば
地図の上は
いつも 雨が降っていた