ホーム > 詩人の部屋 > 望月 ゆきの部屋 > あたりまえの、キス

望月 ゆきの部屋


[347] あたりまえの、キス
詩人:望月 ゆき [投票][編集]

あたりまえの、キスを、ください


追いかけるたびに 
春はもう
ふりむきざまの、目くばせ
早足にからまるイヌフグリの、青
追いつかないのは
季節のせいなんかじゃ、ない、と


のばした指先でさがす
あたりまえのキスのゆくえ
目を閉じたときにふれるもの
ふれて、とおりすぎるものの
ゆくえ


キスする直前の、鼓動
ひじの先からつたわる、振動
あんなに、好きだった、のに、


まぶしい風にカーテンがひるがえると
向こう側の記憶がのぞく
そこが、部屋の内側か外側かは知らない
たしかなことといえば
あなたは
いつも内側にしかいられなくて


あなたは
さようなら、と同時にも
それができる人だった


2005/05/18 (Wed)

前頁] [望月 ゆきの部屋] [次頁

- 詩人の部屋 -