詩人:望月 ゆき | [投票][編集] |
あたりまえの、キスを、ください
追いかけるたびに
春はもう
ふりむきざまの、目くばせ
早足にからまるイヌフグリの、青
追いつかないのは
季節のせいなんかじゃ、ない、と
のばした指先でさがす
あたりまえのキスのゆくえ
目を閉じたときにふれるもの
ふれて、とおりすぎるものの
ゆくえ
キスする直前の、鼓動
ひじの先からつたわる、振動
あんなに、好きだった、のに、
まぶしい風にカーテンがひるがえると
向こう側の記憶がのぞく
そこが、部屋の内側か外側かは知らない
たしかなことといえば
あなたは
いつも内側にしかいられなくて
あなたは
さようなら、と同時にも
それができる人だった