詩人:望月 ゆき | [投票][編集] |
かくすためだけの
キャミソールに飽きて
このごろは いつも
はだかで過ごしている
夏はまだ
わたしの腰の高さで停滞している
午後4時をすぎると
夕凪に 夏がとけてゆく
それは
ひこうき雲が空に消えるスピードとおんなじで
のこされた足跡ほど
不必要なものはないと
思い知らされる
ぜんぶとけてしまう前に
垂直にすべりこんで
夏を およぎ
夏を ただよい
夏を 掻いて、すすむ
遠くで水平線が
かろうじて空と海とを区別しながら
浮かんでいる
夜のあいだでさえ
季節はゆらいでいる
シーツの波間で はだかを纏(まと)い
目をこらして
まだ見えない、夏の果てを
感じながら ねむる
床の上で キャミソールは
つめたく、解き放たれる
夏はいまも
わたしのくるぶしの高さで反芻している