詩人:望月 ゆき | [投票][編集] |
眠っている、舟の
漕ぎだすその先の朝が、
眠っている
イメージが形になっていく、その
次の瞬間に
雲は切れ、空の裏側にはおそらく
比類なき明日が
ただ 立っている
としても、底はまだ 浅い
郷愁と静寂だけをたよりに
生きていくには
世界には時間がありすぎて
荷物を余計に積みすぎてしまった
こころもち 舟が
左にかたむいている
呼吸をととのえて
群青の広がる方角へと
からだを進める
扉を見失うように
あなたを見失ったこと、
喉の痛みくらいのやさしさで
チリチリと尖って 過ぎてゆく
混沌とした景色の中に
あなたと、
時間の水平線をさがす
そこを谷折りするために
叫んでいる、底で
分子が叫んでいる
漕ぎだす波の、浅い間に間をぬって届く
わたしたちは こんなふうに
出あう、もっとずっと前から低音だった
海から続く空へと行きついても
底はまだ浅く
半オクターブだけ高い声を発しては
朝を揺り起こす