ホーム > 詩人の部屋 > 零不の部屋 > 投稿順表示

零不の部屋  〜 投稿順表示 〜


[1] 言の葉
詩人:零不 [投票][編集]

君と
もう幾日ぶりに出会ったら
出てこなかった言葉が
口の中から一字ずつ
一句ずつ
溢れ出てきて
今まで出なかった事が
嘘のようでどうしようもなく
僕は只
途方にくれた

2006/08/20 (Sun)

[2] 小雨が降る
詩人:零不 [投票][編集]

青い瞳と金の瞳の黒猫が言いました。
「今宵は小雨だねぇ」
赤い首輪が鳴りました。
ちりんちりん。
「これじゃ主人の元にも帰れない」
小雨を降らしたのは金の瞳。
だから僕は聞きました。

「君の行きたい所はどこなんだい?」

ちりんと残響を残し。
黒猫は夜明けに消えていきました。

2009/01/22 (Thu)

[3] 海原に一匹の猫
詩人:零不 [投票][編集]

月夜の丘に佇む漆黒の猫。
「寒くないのかい?」
と聞いたら
「月が暖かいからね」
とひげを風になびかせて呟いた。
瞳の行く先は遠い望郷。
風が凪ぐ。ひげが凪ぐ。
ぼんやりとした月は猫の背中を撫でるように照らす。

だから毛布をかけてあげました。
それでも猫は身じろぎ一つせず。
海の向こうを見つめていました。

駆られるのはあの地への思いでしょうか。
幾多の災難にあっても焦がれる思いでしょうか。
僕は羨ましく思いました。

月は遥か遠くから。

猫は海を渡れるのでしょうか。

2009/01/25 (Sun)

[4] カンテラ
詩人:零不 [投票][編集]

僕の世界には貴方がいて
貴方の世界には貴方しかいなくて
けれども
貴方の手にあるカンテラを
そっと掲げた時
僕の端っこが映ればいい
それだけでいい

2009/01/28 (Wed)

[5] 鎖の似合う天使
詩人:零不 [投票][編集]

君は束縛しない。
ただ選択権を突き付ける。
自由と言う名の。

僕は僕で足枷を繋げる。
君の名を書いた、
地表の元に。

翼があっても、
降り立つ場所がなくては意味がない。

鈍色の鎖は、
僕にお似合いだろう?

どうか覚えていておくれ。

僕が何処へ行っても、
君に繋がっている事を。

2009/02/15 (Sun)

[6] 壊せなかった壁
詩人:零不 [投票][編集]

君に笑顔なんて送れる筈もない

君は戦う人だから

僕は戦う人だから

君と同じ戦場を選んだのは僕だけど

君の笑顔はいつになっても現れない

その鉄壁を壊すにはどうしたら良いですか?

君の奥底に触れる気はないけど
僕をもっと信頼して欲しかったな

心の揺らぎ一つ

ほら、
全てぶち壊す時も
君はポーカーフェイス

2009/02/22 (Sun)

[9] 戦場と言う名の世界
詩人:零不 [投票][編集]

戦え
戦え
戦え
全力で戦え
戦う者には生が与えられる

生きろ
生きろ
生きろ
全力で生きろ
生きる者には茨の道が与えられる

踏みしめ、流れた血は
生きてる証だ
唇噛み締めて、零れた涙は
命の証だ

心の痛みを引き摺ってでも
生きろ

明日なんていらないと言うな
言えば言霊となって未来がなくなる

未来を創造しろ

創造して
戦え
生きろ

2009/02/27 (Fri)

[11] 箱色蝶々
詩人:零不 [投票][編集]

夢見る蝶は空を夢見る

自分は鳥ではない
人間でもない
一度死に再び産まれたら
また違う姿で

小さな手足を広げて
埃まみれの部屋を
あっちに一歩、こっちに一歩

見上げた人間は大きくて
踏み潰さないように歩いてくれる

空に幾度かの三日月が昇った頃
手のひらに乗せられた

窓辺から見た空は
桜吹雪

小さく震える羽は
小さく震える唇に押されて
静かに足を離す

真夜中飛び立つ蝶

雨ってこんな感じなの?
雪ってこんな感じなの?

舞い踊る中考えるは
二度目に産まれたあの部屋

力尽きるまで飛んで
帰るのはあの部屋

よろける足取りで手のひらに辿り着く

「ただいま」と
羽を閉じて
蝶は静かに眠る

埃まみれの部屋は
暖かかった

人間は肩を震わせていた

「ごめんね」と
呟いた雫は
羽を濡らした


蝶は冷たい冬を知らないまま
眠りについた

2009/03/12 (Thu)

- 詩人の部屋 -