ホーム > 詩人の部屋 > 喋る狼の部屋 > 新着順表示

喋る狼の部屋  〜 新着順表示 〜


[4] Amaranth
詩人:喋る狼 [投票][編集]

永久凍土に咲く桜
枯れることのない桜
詩人一人ふらり来て
告げる言葉は希望の歌
桜はただただ首を振り
さにあらずとだけ言い放ち
旅人一人ぶらり来て
呟く言葉は恋人の歌
桜はひたすら俯き続け
またさにあらずと言い続け
凡人一人そろり来て
語る言葉は理の歌
桜は地面に崩れ込み
さようさようと泣きじゃくる
実りなく花散らすべきか
どうして咲いた桜の花よ
散らずに残るはさも常世の花
いつかは忘れて仕舞うのだろうか
人は誰しも別れゆく春
まだうら若く青き日の夢
記憶の彼方に咲いたまま
凍りついた幻の花

2013/03/04 (Mon)

[3] 名前
詩人:喋る狼 [投票][編集]

讃えて違うと言い出せば
海を知らない蛙と嗤われ
皮肉に同じと言い出せば
盲目なりやと同情される
我が生涯に悔い等ないと
死にゆく者の気がしれぬ
象る物は命宿らぬ赤褐色
己が血より出来ている罪
存在否定も甚だしいとは
疑う者なく明日が来るは
世界の闢いた時より同じ
ことわりの下蠕いている
神の家畜とひれ伏す存在
足掻き藻掻けど動かない
摂理を前に無力だという
戦士は何処へも臨めない
右手の剣と左手の槍とを
神に突き出せど届かない
隣の者たちは口を揃えて
何者と戦っているのかと
或者は嗤いまた同情する
解けぬ氷は青さがゆえか
春が来るなら解けるのか
壮大にして恐るべき嫌悪
塗れしその血は善人の咎
醜悪にしてまた凄惨なり
恐らく何も変わる筈ない
整然と並ぶそれらを見て
己が粗悪なるは一目瞭然
讃えて違う何かを探して
唯一人だけ奮戦するのは
名前を呼んで欲しいから
唯ただ叫んで欲しいから

2013/03/03 (Sun)

[2] 夜道
詩人:喋る狼 [投票][編集]

夜道を歩き疲れても
見上げる月は近づかない
氷点下香る甘い冷気も
血の溜め池より温かい
終末思想に愛想尽かした
人形のように笑う水鏡
映る影には棘の首枷
肩に担いだ咎の形は
月の背負った光に似ている
およそ異なる双つの十字を
重ね合わせる衝動さえも
過ちなりと仰せでしょうか
抜けてはならない雲の檻
数限りない業を積み上げ
天に向かって近付くことを
貴女は許してくれるでしょうか
一人月を眺めつつ
白い寂しさ心に吹きかけ
歩き続けるべきなのですか

2013/02/28 (Thu)

[1] 人狼
詩人:喋る狼 [投票][編集]

遠くで聞こえる遠吠えが
朧月夜に響いたら
この胸にある十字架を
どうか外してくれますか
霧に紛れて桟橋渡り
向こう岸を夢にみる
その目に映るは夜半の朧か
最果ての夜にもがいても
夜明けの女神は気付かない
もはや麻痺したこの口は
神を呪うこともせず
悪魔を讃えることもない
静寂の中で傷付かない
それはまるで硝子の像
貴女の前では規律を無くす
手懐けられないこの心臓
掠れて咲いた血の花も
気にもとめずに吠えるのは
夜が明けたらいつものように
また人間の振りをするから
言葉じゃ上手く届かない
届け届け届けと願う
何かを今夜も遠吠えに載せ

2013/02/26 (Tue)

- 詩人の部屋 -