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[15] 青の王国
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潮音、拡やかな幸福
海の縁に腰かけていた
中埠頭は青くあり
ごうごうと鳴るごとに
背骨のきしむような気がして
足首をさらう水音で紛らせている


波間に叫ぶようなことばを
持ち合わせてはいない
甘く柔らかな舌は
飛沫との混濁に置いてきたの
群青のぬくみが喉笛に達するとき
首を持ち上げるは逆立ちの眼
じくじくと潮が浸みる
塵芥/とプラスティック片の半透明/海鳥に還る様を/それはとても/広大な円を/えがく/えがいて/渦巻い/て/瞼を閉じる/許して呉れます、か


海の果てには
幸福が在りますか
静止し口許のほころび
指先で繕いながら水音をきく
ならばここが いっとう
こうふくな
ばしょ


現像液にひたしたような君が
ゆうらと海に写った
ファンをまわして
ごうごうとした反響に
定着するのを待つ
水面を四角くすくいあげて
ふところに仕舞うことが
正しかったのか、は、わからない
待ちくたびれの、戯れ
忘れてしまうことに酷くおびえていた
許して呉れますか
ことばは何も残せずにいる


海の縁に腰かけていた
コンクリートに踵を擦り付けて
鈍群青の外気と海を混ぜ合わせる
中埠頭は青く在り
ごうごうと鳴るごとに
海鳥の旋回を強くする
潮音、拡やか
幸福の海


2007/10/18 (Thu)

[14] 海洋博物館
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降ります、のブザーを押し忘れて
バス停をふたつ見送った
硬貨2枚で
海の匂いがするね、と言えるくらいのことは許される
むずかる幼子のような
まあるい昼下がり

ロータリーから地下街へ降りたら
家族連ればかりで気が滅入った
命を孕んでみたい、
そうすればなにもかも
上手くいくような気がする
硝子張りのアーケードが
湾曲してゆくのを
子どもたちだけがじっと見つめていた
そのやわらかな骨組みは
海鳥にも似て

海洋博物館は錆びた骨を剥き出しにして
鴎の子らを怯えさせる
自らの航法を思い出せないのだ
その腹に宿したものが
私には見えない

命を孕んでみたい、
そうすれば飛ぶくらいのことは許される
そんな気がする

2007/10/03 (Wed)

[13] 上手な家への帰りかた
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油をひいたばかりの床に
児らの笑い声が散らばっていたので
つまんで手の平にのせたら
ころころとふるえて弾けた
遠き山に、日は落ちて
白墨を移した袖口に
西日との混濁を見る

小さな胸に
しっかと抱いた
獣の温みが
清らかなままで
いられるすべを
あなたがたは確かに知っている。
あるいは分け与えることを、

黒板の角から、角へ
妬みと憎悪、それからかなしみを敷き詰めて
撫でるように消してゆく
小さな机に降り注ぐ
あなたがたの声が
明日も湿らないよう

獣の肥大した自我が
背を食い破り
臓物の匂いを細胞に刻む。
その温みを清らかな喜びとして背負うことの
美しさよ、

木枠の窓硝子に
児らの笑い声が張り付いていたので
つまんで懐にしまったら
私は私の涙に許されていた
遠き山に、日は落ちて
白墨を払うように
わたしは祈る

2007/10/03 (Wed)

[12] 海の花 rewrite
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海を首肯するように
いっそこの首を
手折ってくれたら、とおもう
午睡する傍らの君は今にも冷やし飴に溶け落ちそうで
露台の木目はいつだって不規則なゆらぎに満ちていて
君はまだ
呼吸と寝返りを
繰り返している
壜を握り締めていた指先の水滴は
あたしの喉へと滑り
逆さまの海が映り込む


どこまで歩いても
君のくるぶしだけを
掠め取るような
浅い、あさい
粘性の波に
首が呑まれる、のまれる
(四十分おきに大きな波が鈍色のうねりでもって、くる、からね)
そのあなうらで
踏みつけてくれたら
もうどこへも行かない
閉じた瞼に
木目の輪郭がしたり顔をする


温んだ壜を逆さまにして
露台から乗り出した半身を
日差しへかざす
垂直に砂を貫く琥珀のそれが
君の午睡を妨げないよう
あたしは海を首肯する


どれほどもがいても
君の手足を弛緩させ
肺に海水を流し込むような
深い、ふかい
群青の眠りに
絡まる髪を持ち上げた突風
巻き昇る、のぼる
白い首の分解と
散花

2007/07/03 (Tue)

[11] 5月8日 曇
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ひやりとした秒針を八十の眼が追っているのかと思うと
白く薄い笑顔のひとつも
浮かべたい
生まれる前からこの椅子で頬杖をついている、
そんな目眩を
終業のチャイムが
のびやかに分断してゆく

きいろい おしゃべりな すかーとが
ぱたぱた ちいさい おべんとうばこ かかえて
ちらばったり あつまったり

切りすぎた前髪が
さっきからちらちらと
目の端に映り込んであたしはもう
消えてなくなりたいような
気さえする
実際、拭き跡ばかりが目につく窓ガラスの
向こうは、
たいてい馬鹿みたいに
青い空が広がっていたから、そこに
飛び込みさえすれば消えて
なくなるのは、
案外
かんたんだったのかもしれない
あいにくと今日は薄曇りで、
友人たちを感傷的に
させるのも
気が進まなかったので、あたしはおとなしく
紙パックから伸びたストローを
噛むことに
意識を集中させる

スカートの上が
秒針の刻んだあたしで少し汚れた

2007/06/11 (Mon)

[10] 集中できる時間なんて
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窓の無い浴室で右手にスポンジを握り締めて、かれこれ一時間が経過していた。
腕時計は靴下の横に置いて来たから、正確なことはわからない。
けれど、あたしが集中できる時間なんてたかが知れている。
水垢の削り取られる様は、見飽き始めていたし、
奥のキッチンで油汚れやら焦げ付きと格闘しているであろう君を思ったら、
もうこれ以上うつむいているのは限界だと、喉の奥が訴えていた。
一昨日刺さった舌平目の骨が、
今更になって抗議しているのかもしれない。
そうしたらあの人も同罪なのだけれど
魚には優しい人だから、骨をつかえさせるなんて所業はきっと、やらかさなかったんだろう。
嗚呼、シャンパンなんて止めておけば、舌平目との相性は抜群だった――、あれをスーベニアにするなんてどうかしていた。
忘れられない味になることくらい、肌身で学んできた筈なのに。
あんまり悔しくて、スポンジを力任せに擦りつける。
くるぶしまで浸った水が、波紋を広げていたけれど、構わず擦りつける。
あたしは魚になり損ねたので、その喉に刺さることすら許されない。
君は明日、この町を出て行く。
あたしはぽっかりとした浴槽で、少し跳ねてみる。

2007/06/01 (Fri)

[9] コモンズの悲劇
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晧々、繋ぐ道

くしゃりくしゃなり
草いきれに隠れて耳を当て、浅緑を喰む羊の腹にもたれかかる。いつしか眠りに落ちた(ぼくはこの匂いを識っている


立ち上がり、方々の出口へ連なる人々の声、こえ。に目を覚ました。眼前ではエンドロールが繰られ四方の電球が場内を次第に鮮明にする。声、こえ。おおきな長方形に、磨りガラスみたいな痺れを見た。リールを巻く規則的な音に、ふたたび目を閉じる(からっぽの、からくり、からっぽの、からっかぜ


水車が夕陽を撹拌していて、思わず耳を塞ぐ。ゆっくり顔を上げると、点灯夫と目が合った。羊が春を喰うてしまうのです、口唇の動きはそう言っているような気がした。浅紺の天鵞絨が羊の腹には巣くっている、だからこうして、灯を点すのだと。(ぼくは、ぽっかりとした羊の中で、胃のかたちになる(スクリーンが水車の影を映している


浅緑に突っ伏していたので涙に融けた草草はべったりと張り付いてしまった。春をやり過ごすためにぼくは羊を連れて眠る。

晧々、連なる灯

2007/07/03 (Tue)

[8] 白昼ランドスケープ
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飴色の柱に、反射して
アーケードから
白い太陽。
舗先に並ぶは赤いケトル、と
母の裾を握る双子の眼差し。
暴力的なかげろうの揺らぎに
金字押し看板が霞む。
マンホールの点、点、
三毛猫が生真面目に
踏み鳴らす

青銅の、道しるべ



「嘘の吐けない男になんか、三行半よ、ミクダリハン」
と古風で進歩的な意見を彼女は受話器越しに、はき捨てた。おそらく、オープンテラスの珈琲と煙草にまじえて。
「悪い人じゃないけどさ、アンタの手に負える相手じゃなかったのよ、ほら、新しい男なら紹介するから、」
この場合、悪い人、というのはなにかしら、と返したら、何か言ったような気がしたけれど、しばらくして電話が、切れた。

緋色の爪先と往来の喧騒――



双子のだんまりを
見つめながら
うわの空、
柱の隙間に青く
ぼんやりと浮かぶ。
ふいに君が、繋いだ単語に
三半器官を
握りしめられて、
フラッシュの白。
おもわず閉じた
瞼の薄い痙攣、
立ち止まった途端
首筋を伝う汗が転がり、
蝉時雨を逆さまに映す。

濃緑の影に輪唱、クレシェンド



電話の淡い光が消え、隣で寝息をたてる君を、見つめる。汗の滲む額に口づけて、買い物に行きましょう、と起こそう。前から狙っていたケトルがあるのよ、と。きっと君は、まるで私が居ること自体が誤算だという顔をして、起き上がるだろう。

待っていて、の一言が、今日欲しいだけ――



ぴたり、鳴り止む
青銅のレリィフが
ゆるいカーブを描いて、
西の方向へ
白い太陽を誘う。
開いた目に
三毛猫が横切る、と同時
飴色の柱に、
反響する、蝉時雨。
舗先からは
赤いケトル、と
双子の眼差しが
居なくなっていた。

全てに満足した私は、ようやく夏を始める

2007/03/16 (Fri)

[7] 花霞
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枝垂れ桜の梢が
紅く疼いては
川面をついばんでいる
硬質な水に波紋
停車場のブリキが
とたん、とたん、音たてるのを
シャツの背中たなびく風に
じっとみていた

頬を伝い垂直をなぞって落とした呟きは
規則的な輪を
ひろげ、ひろげ
淡水のあわを連れてやがて海へ
紺碧のボンネット、轟音と
あいたい、の海鳴り
ね、君には
どちらが先に聞こえる、


水底から逆さまに見上げる空は
きっとカレイドスコープみたいだから、って
そんなゆめばかり


日向を吸いこんだ
濃紺のシートに沈みながら
さっき購った缶コーヒーを
置いてけぼりにしたことや、
ずっと回送バスに
手を上げていたことなんかを
思い出して、
ぺたん、窓ガラスに
ひたいをぶつける。
白く曇った処へ
ひとさしゆびで、つい、と
掻くのは
名前だったりも、する


その向こうでは
木蓮の蕾が
白い孵化
いちばん高い枝から
羽、やわらかくして
少しの身震い
古いレコードのような
羽音がきこえたら
いっせいに
飛びたちます
みんな、みんな
海へ向かう、のね、
春のお迎え


夢と現の境目がわからなくなった頃、
南西の風がながれこむ
この匂いをあたしは、知っている

2007/02/11 (Sun)

[6] 夏音
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身体中の夏を零しながら、どこまで君とあたしは行かれるだろうね、

理解と時間との途方もない距離を思うときプリティ・ヴェイカントは場違いなノイズでしかない。イヤフォンを片方、君に

ほら、車窓が一本の黄色い線みたいに、見えるよ、
あたしはあの日砂浜に掻いた約束とビーチパラソル、それから濃緑のガラス壜を思い出している。

高架下に二人、しゃがんで、零した夏を拾い、集めて、そうして夜明けの列車を待ちます。
イヤフォンからは潮騒のような、ノイズ

膨張と弛緩とを果てなく続ける記憶を思うとき手を伸ばしても波に触れることはできないのだと知る。どこまで行かれるだろう君、と、あたし、

パンタグラフが火花を散らして、水紅色の雲を焦がした、夜明け

2007/01/20 (Sat)
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