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山鳩の部屋  〜 新着順表示 〜


[92] あなたが残したもの
詩人:山鳩 [投票][編集]




雨上がりの夏の朝

車もまばらな誰もいない駐車場


いつも車を止める区画の真ん中に

さみしく置かれていた白いハンカチ

呟いているように雨に濡れて


見覚えのある

赤の刺繍のイニシャル

Y.Y


一瞬

時が止まった気がした

目の前に現れるあなたのまぼろし


あの日の夜明け前の

かなしいあなたのこころが

ここにある


潤んだあなたの瞳は

動かなかった

そんなあなたが確かにここにいた


濡れたあなたの白いハンカチ

そっと拾い上げて

切なく見上げる天使のきざはし


2009/08/16 (Sun)

[91] ぼくの贈り物
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見つめつづけたあなたのこころに

この指先で触れらなくなって

見失ったあなたのやさしさを

探しあぐねていま立ち尽くしています


海の見えるこの丘のうえで

ぼくはあの日をふりかえるのです

出会った頃の記憶ばかりをこの手に並べて

また砂時計をひっくりかえすのです


暖められた芝生の匂いに

頬をなぞってゆく海風に

あなたの残した言葉はよみがえります


あなたを知ったそのときから

ぼくの美しすぎる哀しみがはじまりました

すぐ傍のしあわせの重さを忘れるほどに

2009/07/24 (Fri)

[90] 想い出カタログ
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†青色のえんぴつ†



青色のえんぴつで

君にさよならの手紙を書こう

青は哀しみの色

青は海の色

哀しみの溶け込んだ海の色

だから分かって欲しい

青色のえんぴつで書いた手紙を

凪いだ海に流そう

君のそばに流れ着くように

でも途中で溶けてしまって

君には届かないかもしれない

だから何度も何度も

さよならの手紙を書こう

このちびてゆく青色のえんぴつで


********

一年の終わりに。
私の部屋を訪問していただいた方々、
ありがとうございました。
よいお年を。

2007/12/30 (Sun)

[89] 誰かが君の恋人になるとき
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ようやく北風が窓ガラスを

打ち鳴らす季節


凍えた銀色の月の光が

部屋に差し込む夜半すぎに

携帯のバイブが短く震えた

きっとそれは・・


非通知のサインに

僕は遠くの君に想いを馳せた


木枯らし舞うケヤキ通りで

君の背中を見送った

あれからもう一年


これが僕らの本当のサヨナラのサイン

きっと君は

新しい愛を見つけたのかもしれない

僕の知らない誰かを

愛し始めた君のほほえみを

僕は頭に描いた


これでやっと僕は深い眠りにつける

思い詰めた日々は嘘のように

見つめ続けた白い過去に吸い込まれてゆく

今夜はもう涙はいらない

僕の耳元でさよならを呟く君の夢を見る

君の最後の夢を見る

2007/12/11 (Tue)

[88] 辿りつきたいあの場所へ
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僕のからだのなかに

流れる君の記憶は

明けがたの夢のなかに現れた


悲しみの瞳は

あの海の碧さのままで

透き通る涙を指先でぬぐう


今夜も夢のなかで出会うかもしれない

何度も何度も

君はふり返り手を振るいつまでも


こころに深く刻み込む

この情景を

もう二度と創れないこの世界だから


君の名を呼ぶこと

それは微かなカタルシス


僕は辿りつきたいあの場所に

月の光を浴びながら

海を見つめていたあの場所に

2007/12/09 (Sun)

[87] ひなげしの丘の上で
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冬の終わりを告げる渡り鳥の囀りに

僕は振り返り空を見上げる

暖かな日差しに温められた芝生の匂い

匂いはあの日の想い出をよみがえらせる

過ぎ去った美しい想い出は

ここに葬られている

海の見えるひなげしの丘に

あの日この世界から消えてしまった

そして悲しみに臥されて

もう永久に目覚めることの無い夢の中へ

さあ花束を捧げよう

パステルの薄い花びらに埋もれて

やがて悲しみは閉じられてゆく

君の面影は僕の夢の奥へ

夢の奥へ

2007/12/04 (Tue)

[86] 君の嘘
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忘れてしまいたいのは

君の嘘

やさしく哀しい

君の嘘

てのひらにそっと置かれた

君の嘘


忘れてしまいたいのは

君の嘘

わざとらしい君の言葉は

こぼれる涙を隠すため

軽い嘘ならそれでいい

重たい嘘なら

倖せのため



思い出すのがいやになったなら

六月生まれの君に贈った

あのパールのピアスは

荒れた海に捨ててくれ

2007/12/01 (Sat)

[85] 哀しい想い出
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君の深い哀しみの涙で

濡れた僕のコートの左肩には

いくつかのシミとなって残った

クリーニングに出しても

けっして消えない

消えることのない

哀しい想い出

君が僕のこころに残した

哀しいシミ

2007/11/27 (Tue)

[84] 恋の方程式
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この世界に存在する

恋に携わる

数多くの科学者は

無数の恋の方程式を

編み出してきた



I=mc2


I=(1/2)κρ=1/R2



恋を成就させるために

延々と壁に書き尽くされた

おびただしい恋の方程式


ここで

世界の恋の科学者は叫ぶのです


「さあ方程式よ、飛ぶんだぁ!」


・・・


でも

どの恋の方程式も

いっこうに飛ぶ気配はありません

なぜなら

恋には方程式なんて

最初から要らないのです


恋は『感』なのです

2007/11/25 (Sun)

[83] 一番好きなもの
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僕は一年のなかで

今の季節が一番好きなんだな

晩秋から初冬にかけての

静かで穏やかなこの海原を見るのが

一番好きなんだな

だってここが

僕にとって

一番印象的な風景で思い出深いところ

なんだな

かすんだ水平線を見つめて

蜃気楼のように揺れて

沖合いの貨客船がゆっくり

ゆっくり進んでる

ふっと深いため息をひとつ

小春日和の日差しに照らされた

君の横顔が今はもう幻想だよ

僕の一番好きなこの季節に

君にまたひとこと

『ごめん。』と

こころのなかで呟くんだ

2007/11/25 (Sun)
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