詩人:花 | [投票][編集] |
湿った夜風が
あの日の私と今の私の時空を越えて
何かをきっかけに
音や香や 時に風景や
宙に浮かぶ記憶は
忘却の宝箱から這い出てくる
まるでそれは異次元空間を旅するタイムマシンのように
あの日の私は
湿った夜風にうっとうしさを感じながら
これから始まる物語の結末など知る由もなく
君との出会いに
大輪の花火を思い描いていた
幾重の時を経て
今 日々を慌ただしく過ごしている
時に笑い 時に怒り 時に泣きながら
隣に君はいない
初夏の夜の
湿った空気が頬を撫でた時
あの夜の君が 私に手を振ったんだ
『おっせぇーよ』そう言って暴言を吐きつつも
とびきりの笑顔だったよ
思い出は残酷に今の私を苦しめる
幸せになろうとする瞬間にいつも現われては
優しく微笑みかけたり
時に悲しみの淵に追いやる
忘れかけた日常に
ふらっと現われて
浮かび上がる泡末のように実体のない蜃気楼のように
そして自身に素直になるように求めてくる
悲しみの色に染めてくる
応えのない気持ちに
見返りと応えは違うよ
何処までも一途に
一方通行に