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[105504] 駿河守
詩人:シゲヲ [投票][編集]

死んでしまった。
壮絶に、死んでしまった。


語る言葉はただ一つの詩のみ。


握る剣はただ一つの短刀のみ。


それでも、まだ戦うか?

命を賭して

戦うか?


武士なのだ。
武士であるべきなのだ。


一人の人間であるよりも、
一人の育ての親であるよりも、
一人の家臣であるよりも、

一人の、武士(もののふ)である。


己が進むべき道はしかと心得ている。
死ぬべき道すら、心得ている。


槍を振るい、
剣を払い、
戦い、朽ちる。


背中に熱いものが触れる。
最初は一つ。そして増えていく。
無数に煌く刃が、その身を貫く。


瞬きすら、していない。
心すら、揺らしていない。
無念とすら感じない。
在るべき主君に出会い、そして仕えた。



空が青い。
いつ久しく望んでいなかった空。
青い。
美しい、蒼色の空。


詩を。


詩を……。


槍が、無数に煌いた。

2007/07/16

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