| 詩人:シゲヲ | [投票][編集] |
死んでしまった。
壮絶に、死んでしまった。
語る言葉はただ一つの詩のみ。
握る剣はただ一つの短刀のみ。
それでも、まだ戦うか?
命を賭して
戦うか?
武士なのだ。
武士であるべきなのだ。
一人の人間であるよりも、
一人の育ての親であるよりも、
一人の家臣であるよりも、
一人の、武士(もののふ)である。
己が進むべき道はしかと心得ている。
死ぬべき道すら、心得ている。
槍を振るい、
剣を払い、
戦い、朽ちる。
背中に熱いものが触れる。
最初は一つ。そして増えていく。
無数に煌く刃が、その身を貫く。
瞬きすら、していない。
心すら、揺らしていない。
無念とすら感じない。
在るべき主君に出会い、そして仕えた。
空が青い。
いつ久しく望んでいなかった空。
青い。
美しい、蒼色の空。
詩を。
詩を……。
槍が、無数に煌いた。