詩人:カナリア | [投票][編集] |
なぁもありゃせん
この町は
夏になりゃ蝉がぎょうさん鳴いていて
昼下がりの縁側で
ばぁばは
入れ歯をカタカタ鳴らしてソレを怒りよる
「静かにせんかい!喰てしまうぞ」
その晩出たのは
ソレを素揚げしてから
甘いタレを絡めたやつで
さすがに食えん。
と横を見ると
じいちゃん美味そうにボリボリ…ボリボリ…
夏の終わり
なぁもありゃせん
あの町は
カカァ天下で有名な
うちのばぁばも
じいちゃんも
おらなくなり
ほんま
なぁもなくなってしもて
寂しい
寂しいと
今年も蝉がぎょうさん
泣いておる…
嬉し泣き。