詩人:こうもり | [投票][編集] |
君は指も脛(すね)も傷だらけ
昼も夜も働いてなきゃいけなくて
自分の皮膚を守る暇もない
それを君は鈍臭いとあだなする
僕が心配なのは君の心
傷ついていないか心配なのは心の皮膚
僕が守ってあげなくちゃ
でも僕自身が「鋭利な刃物」だとしたら
エイリナハモノデナイト、ナゼイイキレル?
僕が近づくたびに君の皮膚が破れているとしたら
僕が触れるたびに血だらけになっているとしたら
オマエガソレニキヅイテイナイダケダ
「鋭利な刃物」かもしれない僕は
必死に刃先を壁に打ちつける
刃先がボロボロになるまで鈍磨(どんま)させる
自分を守ることもできなくなるけど
何も切れなくなるまで鈍磨させる
そうすればもう一度
君に触れられるかな
君は傷つかないかな
無用の長物と化した古包丁のように捨てられる
…のかな
オマエハドッチニシロステラレルサ
捨てないで
たとえ切れなくても
たとえ役に立てなくても
せめて僕との記憶のよすがとして
台所の隅の引き出しの奥に
そっと置いておいてほしいよ
僕はぴくりとも動かずじっとして
君の家事の物音だけに耳を澄まして
何年も何年もひっそりと息をしながら錆びていくから
どうかお願い
捨てないで