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[137267] 君影草の詩
詩人:黒烏 [投票][編集]


遥か彼方に社堂見上げ
風凪ぐ灯火の下 静けし

夕暮れ 二人を朱く染め
君影草 しあわせに笑った
『いつかまた この地で』
二人包んだ夕闇は
町の内奥へと差し込みつつ
黒く 嗤う



赤き禍事訪れし
さだめ引裂いだ其の日
しゃん しゃんと 揺れる

「さればお国の為。
僕はこの身捧げましょう」
「ああ、神様!
どうか彼を見放さぬよう!」

せめて後少しばかりと
彼の胸で
君影草 揺れた



[時の掟を 破りしは
我等共々 堕ちるのだ]

堕ちよ
堕ちよ
堕ちよ
堕ちよ

夜帷 縫い込め
風吹き荒んだ折


――白い箱に入り
ちいさなちいさな石ころになって
彼は 帰ってきた――


重い花つけた君影草
ぽきりと折れた

堕ちた



花伝う血涙 木箱すがり号哭
憎憎しと責めあぐ
彼の遺愛も無ければ
代わりの石ころ抱き
夜もすがら 這いずり廻る

「何が正しくて 何が間違っているのか
誰か 教えて下さい 誰か」



君影草は夜明けの篝火に紛れ
ただひっそりと 枯れていた

枯 れ て い た

2009/01/01

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