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[145117] 大判焼きの溶けるのも気にせずに
詩人:剛田奇作 [投票][編集]

車の座席にのせた

冷凍食品の大判焼きが溶けるのも
まったく気にせずに


私は車を飛ばした


昼か
夜か


過去か
終焉かも


わからない
時間の中で


見慣れた街の
見慣れない路地という路地を

走りまくった


溶けかけの大判焼きと
壊れかけの私と
うるうるした息子をのせた


オンボロの軽自動車


意外に頼もしいエンジン音


白黒の街に響く
勇者の掠れた歌声


孤独に付け入って
纏わり付く
粘っこい時間や 感情や

奇抜にカラフルな過去を

振り切ってほしい


わかったか?軽
だから、走れ


追いかけてくるやつらを
さらに振り切って



大判焼きが溶けるのも
ほっぽって


苺ヨーグルトのフタにストローを
ぶすぶす刺して遊んでる
息子も

視界の隅に
ほっぽって


私はひとり
街が完全にスローモーションになって静止して
見えなくなるまで


走り続けた



家に帰ったら


ご褒美だ
マシュマロを
一つずつ食べようではないか


息子よ






2009/06/30

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