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[170136] 動かない時計
詩人:どるとる [投票][編集]


彼の時計はもう動かない
短い針も長い針も
もう動かない

教科書で見た
戦争のあの瞬間
とらえたような
一枚の白黒(モノクロ)写真

きっと彼の時計はもう必要ない
だけどこのまま
彼の時刻は進まない
彼の遺した言葉や押し花は きっと見る人の心に悲しみを宿す
でも彼はやさしく笑う 写真の中でやさしく笑う
だから彼は空の上
動かない時計を抱きしめて やさしく笑う
きっと やさしく笑う

動かない時計の中で
止まったままの時の中を 生きる

朝も夜も来ない
幻のような
そんな時の中で
動かない時計は
仕事を辞めて
じっと眠ってる

もう時計は死んだ
彼の命も終わった
だけど彼がいた
この場所に花が咲く
新しい家も建つ
誰かが住む
町は変わり
景色も変わり
時代がいくつも
流れ流行り廃りを繰り返して僕らはデジタル時計のように正確な時の中をせわしく動く秒針のように機敏に生きる

彼の写真は町の公民館に飾られて
彼のいた町は
もう廃れて
動かない時計は
本当に動かなくなった
動かない時計は
永遠に動かなくなった。

2011/07/30

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