詩人:高級スプーン似 | [投票][編集] |
歩いても
そう遠くない距離にいる
けれども
足は動かずに
訪ねるのは年に数回だけ
老い先短い命だから
会えるうちに行かないと
後悔しても知らないよ
自分に言い聞かせ
覚悟を決めないと
会いに行けない不幸者
血は繋がっているけれど
心を閉じて
愛想笑い
家族なのに
可笑しいよなあと
苦笑して
僕は僕を嘲笑う
開き直って外に出る
花屋に寄って
買ったのは
一輪の家に帰る理由
これがないと
育った場所にも戻れない
ドアを開ければ
そこにいる
緊張はしないが
息が苦しい
いつから
こんな風になったのか
これでも
マシになったほう
無意味な問答繰り返し
玄関のドア
開けると暖かい笑顔
またひとつ
皺が増えていた
一輪の理由を渡して
邪魔すらせずに
一息もつかずに帰る
次に来るのは
いつだろう
今度はもう少し
早く来たいな
それからちゃんと
話もしたいな
次に行く理由は
どうしようと
考えながら
僕は歩き出す
そうして僕も歳を取り
いつか死ぬ
その前にまた
会いたいな