ホーム > 詩人の部屋 > 過去ログ > No.177000-177999 > No.177179「陽炎」

過去ログ  〜 過去ログ No.177179 の表示 〜


[177179] 陽炎
詩人:どるとる [投票][編集]


五月雨のように
僕も夏を言い訳に
あなたの傍に居たい

五月雨のように
僕は暑さを言い訳に
あなたの瞳に降っていたい

五月雨のように
日の長さをいいことに
あなたとの時間をもう少し味わいたい

汗の流れるままに
白いその足を
僕はただ見つめているだけでそこに夏を感ずる

花火や提灯 祭り囃子に夜店に 蝉しぐれ
そんなもの何ひとつなくたって 誰もが夏の訪れに気づくのは浴衣姿のあなたを見たからじゃなく
つり下げられた風鈴が風に揺れたからじゃなく
あなたが夏の薫りをはこんでくるからなんだ

ほら、縁側差し込む眩しい夏の陽に 隠れて 踊る 君の影
淡く ほろ苦く 映るから 好きだというのも言いそびれ 今日もただ胸に秘めた恋心
線香花火のように ひらり闇に落ちてく

夢幻のごとく 現れては消えゆく夏のように

陽炎のごとく 近づくほどに遠ざかる そんな人だから

僕は追いかけることさえ哀しくて日陰に立ち止まる。

2012/07/09

前頁] [投票する] [次頁

- 詩人の部屋 -