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[178007] 堕する
詩人:遥 カズナ [投票][編集]














牛乳の入った白いマグカップの中、黄金虫がのたうっている

マグカップの中に舌を差し入れると
鈍い痛みと一緒に
棘のような足で舌にしがみついてきた黄金虫を
あま噛みするように奥歯に挟み込む

世間知らずの知る
「快楽」という文字で
この恍惚を推し量られたのだとしたら
ゆくりと後悔するがいい
その名前を逆さ読みで呼び、呼ばれている事に気がつくまで
そうしてやろう

草原に墓がある
小さな白い墓だが
たむかれる花の絶えない 風の音しかしない
静かな場所だ

紐でゆわえられた山羊がいる
ハサミで
紙みたいなものなら
何でもじょきじょき切って食わせる
面白いように食うし
実際、手持ち無沙汰だった少年には気持ちがよかった

三四人の大人達が寄り集まり
一人がハンマーを振りかざし
山羊の脳天を打つ
幾度か鈍い音がして
それでも
固い角で頭蓋骨を覆われた山羊は
気絶も出来ずに白い毛を血まみれにしながらメエメエ
と鳴き叫ぶ
別の一人が角を両の手で掴み、抱え上げると
朦朧とした山羊の喉笛を
他の誰かが鋭いカマで掻き裂いた
どっと血が吹き出し
ヨタヨタと山羊は倒れこむ

黄金虫は奥歯に挟まれながらモゾモゾとしている

今日は宴だ
大きな鍋にはバラバラにされた山羊の肉が放り込まれ
山羊汁の匂いに隣近所も詰めかける

皆、笑っている
笑っている

墓にたむかれた花を
ぐしゃぐしゃにして撒き散らす

宴には皆の湯気のたつ膳が用意されている

黄金虫をゆっくりと噛み潰すと
人の道からはずれてしまった
奈落の臭いのような香りが
鼻から抜け出ていった

少年の膳だけが手付かずにすっかりと冷めきり
誰かの名前を逆さ読みで呼ぶ声が
白い墓に吹く風の中からした

















reiwa2020

2020/07/17

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